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 ロシアのウクライナ侵攻によって、ウクライナの国民はもとより、世界中の多くの企業が大なり小なりの影響を受けている。電子やIT産業の中にも、市場やサプライチェーンの見直しを迫られるところが出てくることだろう。今回のテクノ大喜利では、ウクライナ危機が電子産業やIT産業に及ぼす影響を議論した。

ソフト開発への影響はこれから

 服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏は、「日本は半導体素材大国といわれるが、シリコンウエハーの原材料である金属ケイ素や、フッ酸の原料である蛍石と硫酸を反応させて作るフッ化水素原液は、中国をはじめ海外からの輸入に頼っている」と指摘。素材産業のサプライチェーンを見直す必要性を訴えている。

 東京理科大学大学院の若林秀樹氏は、ソフトウエアの開発力が不足する可能性を指摘している。「ウクライナは、東欧のシリコンバレーと呼ばれ、ITでは東欧どころか、欧州でも一頭地を抜いている。ウクライナは13万人近い人材がエンジニアリングの学位を持ち、これはフランスやドイツよりも多い。しかも、その割には人件費が安く、世界トップ企業のアウトソーシング先であり、米Amazon.com、米Google、韓国Samsung Electronics、中国Huawei Technologiesなど多くの巨大企業のR&DやIT拠点となっている。日立製作所が買収した米GlobalLogicも、5カ所のエンジニアリング拠点を持ち、約7000名が在籍するようだ」という。これらの拠点の復旧は目処が立たない。ソフトウエアの開発人材の不足の影響が顕在化してくるのはこれからだ。

 ウクライナ危機を契機に、若林氏は、「電子業界でこれまで続いた水平分業化やEMS(受託製造サービス)アウトソーシングの流れは終わるだろう。これまでは平和が当たり前であり、サプライチェーンが混乱するのは非常時のみだった。しかし、もはやサプライチェーンの混乱が平時となるかもしれない」という。そして、「台湾有事」に現実味を感じ、その備えの具体化を考え始めている企業は多いのではないか。