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 本号の特集では、小型の電動飛行機“空飛ぶクルマ”の進展を取り上げました。これをタクシーとして使う“空飛ぶタクシー”がビジネスとして成立し、小型の電動飛行機が都市上空をビュンビュンと飛ぶような時代が本当にやってくるのか。未確定な要素は多々ありますが、これまでにない市場という投資家にとっての魅力、技術的チャレンジがあるという技術者としての魅力の両方がある、ホットな分野であることは間違いありません。

 ところで、小型電動飛行機の最初の使い道として、なぜタクシーから始めるのかと疑問を持たれた方はいないでしょうか。どうして飛行経路の下に人が大勢いる都市部で、しかも人を運ぶのだろうか、と。リスクを考えれば、山間部や海の上など、人口密度が低い場所で貨物輸送を行い、ここで十分な検証と改良、経験を得た後で、人を運ぶべきではないでしょうか。

 私はこの点が気になって、詳しそうな人に聞いて回ったことがあります。結論はどうやら「人を運ぶのが儲かるから」ということのようです。確かに、人であれば手荷物を合わせて100㎏程度で、20分乗せただけで、数万円が稼げます。4人を乗せれば10万円近くです。人ほど需要があり、高単価な荷物はなかなかなさそうです。

 それでも、人を乗せた機体が人口密集地に墜落ということになれば一大事です。人を運ぶ前に、どこかで経験を積めないか。そこで、私が注目しているのが、山小屋です。国立・国定公園の山小屋は、自動車が入れる道がなく、資材はもっぱらヘリコプターで配送しています。ただし、操縦士不足やヘリの老朽化などから、ヘリによる運搬が存続の危機を迎えています。この代替手段として、小型の電動飛行機を提供すれば喜ばれるし、経験も積めます。

 ざっと計算したところ、長野県と富山県にまたがる白馬周辺だけでも年間50トン程度の運搬需要があり、数億円のビジネスになりそうです。山小屋で“空飛ぶコンビニ”も実現できます。