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 本号の特集「音だって超現実~音場を操り、世界を一変~」では、イヤホンのようなコモディティーの音声出力装置で3次元の音が再生できる時代がやってくると述べました。ここで浮かぶ疑問が、「音が3次元になることで何か良いことがあるのか?」ということです。もちろん、臨場感が高まる効果は得られますが、音楽や映画を楽しむのに今のままで十分という方も少なくないように思います。また、音声による情報提示に方向を入れるという使い方もありますが、サービスが一般化していない現時点では、本当に便利なのかピンときません。

 この疑問に対する私の答えの1つは、音の取捨選択ができるようになることだと考えます。音を3次元的に収集し、これを3次元的に再生できるわけですから、ある特定の方向の音だけに絞って再生するということが可能です。例えば、多人数でテーブルを囲むような飲み会のとき。周囲の声がうるさすぎて、対面に座っている人とうまく会話ができないということがよくあります。この方向からの音だけを強調できるようになれば、こうした問題を解決できます。

 上空を飛ぶ飛行機の騒音を消す、工事現場からの騒音を消すといった用途も考えられます。既存のノイズキャンセリング付きヘッドホンでも、外部の音を消す、外部から音を通す、というオンオフの制御はできますが、方向を選択することはできません。3Dオーディオによってゼロイチではない選択肢が加わるわけです。

 現実世界に情報を足すのではなく、現実世界から情報を間引くことをDR(Diminished Reality、減損現実)というのだそうです。人の周囲の環境に新しい音を足すという発想に加え、引き算の発想も付け加えれば、新しいサービスが見つかる予感がします。

 ところで、現時点では、人の全周から入ってくる音を集める360°マイクの決定打となる製品や装置はないそうです。ここにもビジネスチャンスがありそうです。(中道)