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 人類はさまざまな道具を発明することで他の生物にはない、遺伝子の変化によらない進化を果たしてきました。例えば、農具や土木技術を発明したことで、田畑を作り、安定的な食料を手に入れ、都市を生み出しました。顕微鏡や温度計など人の目や温感では捉えられない情報を拡張する道具も生み出し、世界を新たな視点で見られるようにもしました。情報を伝えるための文字を発明したことで、個人の脳の中にとどまっていた情報を他人に伝えたり、子孫に伝えたりすることができるようになりました。これで、世代を超えた知識のマッシュアップが可能になったわけです。

 そして現代。コンピューターの発明と、それを結ぶネットワークによって、個人が生み出してきた知識をこれまでにない質と量で結びつけ、種としての進化を加速しています。手ではとてもできない膨大な計算をコンピューターにさせることで、さらに精緻な道具を創り出したり、新しい知見を得たりできるようにもなりました。

 この次の進化は何か。そこで本号の特集で注目したのが、技術を使いこなす側である、人の進化です。いくらすごい道具ができても、使いこなす側がこの道具に対応できていなければ、道具は宝の持ち腐れになってしまいます。

 例えば、囲碁や将棋の世界では、人工知能(AI)とのタッグによって、より強い手を打てるようにしようという試みがあります。AIが強い手を指南してくれても、それを受け取る人の側がそれを理解できなければ意味のない手になってしまいます。人の側も、その意図を読みとれる研鑽が必要なのです。

 これまでの時代と違うのは、人の体そして脳についての知見が溜まり、これらをセンシングする一方、適切に刺激することで、新しい道具の使いこなしを誰でも最短で習得できるようになる点にあります。こうして人は、コンピューターやロボットを活用し、さらに進化していくのです。その先にはロボットと肉体の融合、遺伝子改変を含めた肉体改造の時代も見えています。(中道)