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 フォルクスワーゲン(VW)の電気自動車(EV)「ID.3」を分解・分析するプロジェクトに参加しています。ID.3は、電池のみで走るEV専用にVWが設計した車体プラットフォーム「MEB」や、全車種横断のソフトウエア開発・実行基盤「vw.OS」を搭載した初めての車両ということで注目しました。

 分析の結果、際立ったのが米Tesla(テスラ)のEV「モデル3」の先進性です。VWの資料などによると、ID.3が採用するMEBでは、将来、ステアリングやアクセル、ドアなどを制御するコンピューター、自動運転用のコンピューター、人との接点となる表示系やエンターテインメントの機能を提供するコンピューター、の3つに集約する計画のようです。筋肉となるアクチュエーターや、感覚器であるセンサーには、判断機能は用意しません。

 これまでの車両では、機能ごとにECU(電子制御ユニット)があり、そこにアクチュエーターとセンサーがつながり、それぞれのエリアごとに判断、制御がされていました。これを中央集権的なアーキテクチャーにすることで、アップデートによるソフトウエア変更を容易にし、車両の制御を一気に変えることができるようにすることを狙っているのです。

 ただ、ID.3の車載ネットワークを見る限り、従来と大きく変わった印象は受けませんでした。特にドアやヘッドライト、パワステ、ABSなどは従来の構造を維持されているようです。逆に、表示系のネットワークは大きく変わっていました。今後も大きく変化しないところは触らず、変化が激しいところに新しい仕組みを入れていく方針なのでしょう。

 一方で、テスラのモデル3は、2020年5月号の本誌で解説しましたが、一からすべてを設計しているため、古い設計はありません。すでに、VWが目指す3つのコンピューターに集約済みです。持たざる者の強さを感じます。

 このほか、ID.3の新しい表示系のシステムは、すべて韓国LG Electronics(LG電子)製でした。自動車の世界でも、携帯電話機業界の二の舞が起きるのではないか、心配です。(中道)