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 「毎号50ページ以上の特集を」。そんな方針でこの1年間、日経エレクトロニクスをお届けしてきました。狙いは2つありました。1つは日経エレクトロニクス50周年の企画として。もう1つは、単一のテーマで深掘りすることで、読者の皆様に、その分野への知見を広げていただくということでした。この50ページ特集シリーズも、今号で終わりです。

 その最後を飾るテーマは、超大規模蓄エネ技術です。現在、世界的なカーボンニュートラルシフトの中で、太陽電池パネルや風力発電機など、電気を作る側の大規模導入が注目を集めています。しかし、これらの自然エネルギーは人のコントロールが利かず、発電量が時間や季節によって変動します。需要に対して、発電量が少ないときもあれば、多すぎるときもあるわけです。この間を埋めるのが、今回の超大規模蓄エネ技術です。

 もちろん、この蓄エネ技術の筆頭は、Liイオン2次電池ですが、管理の大変さや、自然放電、資源や材料偏在の問題などのリスクもあります。そこで注目を集めているのが、今回紹介した重力や浮力、圧縮空気など、中学や高校の理科の授業で出てくるような単純な方法を使った蓄エネ技術です。興味深いのは、こうした超大規模な蓄電技術が、それを建設する土地の特性を利用したものだということです。山がある場所なら斜面を、岩塩層がある場所ならこの岩塩に水で堀った穴を、廃坑がある場所ならその穴を使うといった具合です。

 土地と蓄エネ技術がセットとなるので、自治体にとっては新しい産業誘致の在り方を生むかもしれません。今回は、ほとんど取り上げませんでしたが、熱をため込み、これを電気にせずに熱のまま利用するという方法もあります。コンクリートジャングルである都市全体も、ある種の蓄エネ装置とみなせるかもしれません。

 さて、次号からは、20ページ程度の特集と複数の解説記事からなる、以前のスタイルに戻り、バラエティーのある誌面をお届けします。1年間お付き合いいただきありがとうございました。