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 2010年ごろのスマートシティーブームでは、エネルギーマネジメントや上下水道システム、信号や公共交通機関の制御など、いわゆる大きなインフラに注目が集まっていました。近年では医療、行政手続き、決済、農業、工業に至るまで、あらゆるものをICTの力を使って変革することも、スマートシティーに含むようになってきました。最近では「都市のDX(デジタルトランスフォーメーション)=スマートシティー」と表現されることもあるようです。ではなぜ、このように変化してきたのでしょうか。

 様々な要因があるとは思いますが、私はスマートフォンの普及が、その一番の理由だと考えています。10年ごろに都市をICT技術によってバージョンアップさせようと考えたとき、行政が手を付けられる場所は、自らが主体的にかかわる大きなインフラしかありませんでした。市民に直接働きかけようとしても、その手段がなかったわけです。

 その後、スマートフォンが普及したことで、行政から市民に対して、直接アプローチできるようになりました。逆に、市民の側から行政が持つインフラに直接アクセスできるようにもなったわけです。これにより市民のデータと、行政のデータおよび情報インフラが融合したサービスを生み出す土壌が生まれました。さらにここに、企業のデータや情報インフラが融合することで、市民にとって最適なサービスが提供されることになるでしょう。

 こう考えると、行政がアプリをつくるというのはナンセンスに思えます。市民にとっては、行政のサービスは生活のための1つの機能でしかなく、その他、大多数のサービスは民間企業から提供されているためです。であれば、民間企業のサービスの1つとして行政のサービスが利用できるシステムになるべきでしょう。もちろん、このとき市民や行政側の機微にかかわるデータを民間企業が勝手に使えないようにする仕組みやルールが必要です。今回の特集の肝も、そこにありそうですが、まだ明確な解決策がないのが現状のようです。