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「お金で時間を買うことはできない」。そんな格言がありますが、メタバースの到来によって、「お金があれば時間を買える」時代に入る予感がしています。実は、これまでにもお金があれば時間を買うことができました。例えば、移動。自家用ヘリコプターや自家用ジェット機を持っていれば、渋滞や旅客機の運航スケジュールに左右されることなく移動ができ、自由に使える時間を増やすことができます。また、雇い主の考え方や方針を理解した秘書あるいは執事のようなスタッフを雇うことができれば、自ら現場に出向かなくても、交渉や決定をある程度請け負ってもらえ、時間的な余裕が生まれます。

 ただ、こうした手段を用いた場合、逆に失われるものがあります。それは体験です。飛行場までの道のりを運転する、あるいは電車に乗るという体験、飛行場で飛行機を待つという体験、人と直接会って交渉したり、話したりするという体験。こうした体験によって、新しい発見やスキルの獲得が行えます。ショートカットで移動したり、人に仕事を任せたりした場合は、こうした体験を得られません。人は体験を通して新しい着想や、スキルを得たりします。もちろん、時間が余ればその余った時間で別の体験をしていて、そこで新たな知見を得ているのですが、同じ時間の流れに対しての体験に意味があるという点では、すべての人に時間は平等といえそうです。

 メタバースがこの状況を崩すと考えるのは、追体験を可能とするからです。現在、自分の思考プロセスを学習したアバターをメタバースに放ち、リアルな人と交渉するといったサービスが考えられていますが、ユーザーは後からその過程をそっくりそのまま再生することができます。これは、代理人を通してでは得られないものです。渋滞のいらだちや、空港での待合いを体験したければ、そうした体験をサービスとして得ることもできそうです。今後、ビデオの早送りのように体験を加速して得ることも可能になるでしょう。もちろん、人生において偶然というものも重要なので、偶然の体験をセットしてくれるサービスも生まれてくるに違いありません。