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 今回の特集では、普段我々の目には見えない通信インフラが、米Amazon.comや米MicrosoftといったITの巨人たちによって、どんどんと侵食されている姿を描きました。経済合理性を考えれば、この動きが今後加速することこそあれ、止まる理由はありません。通信事業者にとって、自分で設備投資をしなくても、無限とも思えるリソースを、コマンド1つで増やせるスケールアウトの仕組みは願ってもないものでしょう。さらに、通信事業者から発生するトラフィックの多くは、IT巨人のクラウドとの通信ですから、通信効率の面でも最適です。

 高信頼性が求められる通信事業者の信号処理基盤が、巨大ITのクラウドに巻き取られるということは、今後、電力やガス、水道など、生活になくてはならないシステムの制御インフラも、こうしたシステムに載ってくる可能性が高まったと考えるべきでしょう。むしろ、5Gや6Gの時代にはこうしたインフラの制御システムが通信事業者のネットワークに収容されるともいわれていますので、いつの間にか、生活インフラ全てが米国のIT巨人のクラウド上で動作していたということになるのかもしれません。

 消費者の立場としては、安定して軽快に動作し、安全に、安くサービスを提供してくれればシステムがどこで動いていてもよいような気もします。一方で気になるのが、有事の際です。コンピューティングリソースを海外に依存している場合、紛争が起これば、突如これらが使えなくなるという可能性はあり得ます。サイバー攻撃などによって特定のクラウドシステムが狙われることもあるでしょう。

 では、重要インフラについては規制をかけ、他の国籍企業のクラウドの利用を禁止するのか。経済合理性が合えばそれも良いでしょうが、なかなか難しそうです。そもそも、企業のシステムの多くは既に、米国企業のクラウド上で動作しています。特定のインフラだけ守ろうとしても、複雑にシステムが連係しているために、結局は守れない気がします。「もはや、この波に抗する方法はなさそう」というのが、率直なところです。