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 トヨタ自動車とデンソーが、車載半導体を開発する新会社「ミライズテクノロジーズ」を2020年4月1日に共同で設立した。社長には、デンソーで長らく技術開発に携わってきた加藤良文氏が就任する。新会社設立の狙いは何か、具体的にどんな取り組みを進めるのか、加藤氏に話を聞いた。(聞き手は中道 理、東 将大)

(写真:上野 英和)
(写真:上野 英和)
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ミライズテクノロジーズが設立された背景は。

 ご存じの通り、クルマの世界では100年に1度の大きな変革が訪れています。特に変化が著しいのが「CASE」と呼ばれる、コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化の4分野です。クルマを作っていく上で機械的な部分の開発は必要ですが、より革新が求められているのはソフトウエアや半導体の分野でしょう。

 これまで半導体の先行開発はトヨタ自動車とデンソーで別々に行い、切磋琢磨してきた部分があります。しかし、今後はもっと多くの企業と競い合う必要が出てきます。いわゆる「GAFA」の人たちも競争相手になるでしょう。新しい競争相手に備えるためには、トヨタとデンソーが一緒になって半導体の開発をやるべきだと考えて、ミライズが設立されました。

 社員は、2020年4月1日のスタート時点で520名。全員トヨタとデンソーからの出向者で、出向元の比率は半分ずつです。具体的には、トヨタからはエンジニアが約100名で開発技能員が約150名、デンソーからはエンジニアが約150名で開発技能員が約100名です。開発技能員というのは、現場のエンジニアが半導体のレシピを提示した際に、実際にそのプロセスで試作したり、作った半導体の出来栄えを分析したりするスタッフです。

ミライズテクノロジーズは、具体的に何をやる会社なのでしょうか。

 我々が開発する分野は主に3つあります。SoC(System on Chip)、パワーデバイス、そしてセンシングです。この3つがCASEの時代で最も重要な要素だからです。

 SoCに関して言えば、ミライズとして詳細設計をやることは目指していません。我々が行うのは“目利き"です。いわゆる選定作業ですね。ただ選定するだけではなく、自動車産業が求める要素を的確に伝えて、自動車産業と半導体産業をマッチングさせる役目を担えると考えています。

 例えば、自動運転や環境センシング、複数のアクチュエーター群を集中管理する非常に大きなコンピューターを検討しているとして、その中で必要なアルゴリズムに対する要求事項をきちんと半導体ベンダーに伝えられれば、ベンダーからも車載用に適した手法や、民生用途のテクノロジーの転用などを提示しやすくなります。そういった部分をすり合わせておけば、互いに共同開発しやすくなり良いものが早く作れるようになるでしょう。