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2020年6月末に創業家以外では初めて村田製作所の代表取締役社長に就くことが内定した中島氏に、今後の経営方針や変化の方向性、そして現行事業の見通しを聞いた。(聞き手=野澤 哲生)

(写真:今 紀之)
(写真:今 紀之)

中島さんは日経エレクトロニクス(以下、NE)誌で高周波部品関連を中心とした取材を頻繁に受けていただいたり、寄稿をいただいたりと、NE読者にとってもなじみのある方だと思います。ただ、実際には社内の多くの事業を幅広くご担当されてきて、2017年からは代表取締役にも就かれていた。社長就任は時間の問題とみる向きもあったようです。この話があったとき、ご自身はどう思われましたか。

 担当した事業がすべて成功だったかどうか分かりませんが、事業内容を一通り把握はしているといえるでしょうか。ただ、今回の社長就任について2019年11月初めに現社長(兼会長の村田恒夫氏)から内示があった際は、やはり驚きました。ムラタはこれまでずっと創業家のオーナー企業で、社長は創業家がなるものと思っていたからです。

新社長として、これまでの路線をまずは継承されるのですか。あるいは、変えるとすると何を変えていかれるのでしょうか。

 これまでムラタが大切にしてきた行動規範が2つあります。1つは、技術者の好奇心を尊重するという点、もう1つは現場の改善力を重視するという点。この2つは、今後も大事に継承していきます。

 一方、変えるというか、これまでもあった方向性をより加速させていきたいことも2点あります。1つは、意思決定の権限をできるだけ現場に委譲して自律分散型の組織にしていきたいという点。それによってスピード感を高められます。

 もう1つは、株主などステークホルダーの方に対してはもちろん、従業員に対しても正確な情報開示をもっと進めて経営の透明性を高めていくことです。従業員が経営情報を知ることは、1つめの自律分散型組織にとって必要なことで、この2つはセットになっています。

 中長期の目標として今後増やしていこうと考えているのが、事業モデルです。これまでの部品を売るビジネスだけではなく、ソリューションビジネス事業を育てていこうとしています。具体的には、ムラタがこれまで手掛けてきたセンサー群から成るセンシングネットワークのデータや情報の提供サービスで、既に少しずつ始めています。例えば、トラフィックカウンターのデータを交通情報サービス事業者や地図の配信サービス事業者向けに提供したり、建設会社の従業員のヘルメットにセンサーを実装して安全モニタリングに用いたりしています。スマートファクトリーのセンシングネットワークのデータでもビジネスができると考えています。

 ただし、これらは当社がこれまでやっていなかった分野で非常にチャレンジングです。すぐに経営を支える柱、中核ビジネスになるというわけではありません。今後、育てていくべき事業といえます。

(写真:今 紀之)
(写真:今 紀之)