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長期の業績低迷期を脱し、過去最高益を更新するなど業績好調のソニーグループ(ソニーG)。同社は2021年度の研究開発(R&D)費を6100億円と前年比2割増額し、攻勢を強めている。かつてのエレクトロニクス企業の姿とは大きく異なり、多様な事業を手掛けるコングロマリットへと変化したソニーGは、新型コロナウイルス感染症が流行する不確実な時代に、会社の未来を左右するR&Dでどのようなかじ取りをしていくのか。同社執行役 副社長 兼 CTOで、R&Dトップを務める勝本徹氏に聞いた。(聞き手は内田 泰、東 将大)

(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)

エレクトロニクスのみならず、ゲームやエンタメ、金融事業などを手掛けるソニーGの事業戦略は従来の電機メーカーと大きく異なってきているように思いますが、CTOの役割についてどう捉えていますか。

 この10年で、大きく変化したと感じています。今の時代のCTOは、個々のビジネスの背景にある“重要なもの”をよく考えて、適切なテクノロジーをそこに当てていくことが非常に大事になってきました。

 例えば音楽では、有名な作曲家が作ったメロディーや、すごく上手な歌手のパフォーマンスにどうしても注目が集まります。従来の商品起点の開発の癖が抜けていないと、このメロディーやパフォーマンスをいかに高音質で届けられるかといったテクノロジーに目が行きがちになります。

 でも実際に現場に行ってみると、全く違う分野のテクノロジーが求められたりします。音楽ビジネスでは、根本にあるのは複雑な権利関係です。ある楽曲のミュージックビデオの収益は、作曲家や編曲家、歌手、ビデオ制作者など様々な人に配分する必要があります。こうした権利処理はすごく難しく、これに関するテクノロジーが重要だと気付かされるのです。

 つまり、商品起点で考えるのではなく、それぞれのビジネスの違いや重要なことを理解していないと、現場が求めるものと、研究開発を進めるべきテクノロジーにかい離が生じてしまいます。この点が、以前のCTOと現代のCTOの違いだと考えています。