2018年2月の創業から1年5カ月で109億円という巨額資金を調達した宇宙系スタートアップがある。人工衛星の開発からソリューションまでをワンストップで手掛けるSynspective(シンスペクティブ)だ。創業者でCEOの新井元行氏に、衛星データビジネスの可能性や今後の成長戦略などを聞いた。(聞き手=内田 泰)
2020年12月15日、ニュージーランドのマヒア半島にある発射場から米Rocket Labのロケットによって、 当社が開発した小型SAR(合成開口レーダー)衛星「StriX-α」が打ち上げられ、 予定通りの軌道への投入に成功しました。StriX-αは当社の1号機で実証衛星という位置づけです。実際にSARのデータが取得できるのか、商用で使えるかなどを検証します。21年秋ごろにはStriX-βを打ち上げる予定です。こちらは推進システムを搭載し、軌道の高さを維持して自走が可能です。コンステレーション(多数機の衛星による観測システム)の実現を意識した設計になっています。
SynspectiveはSARを搭載した小型人工衛星やコンステレーションの開発のみならず、衛星データの販売、解析、顧客の課題を解決するソリューションの提供までをワンストップで提供します。
SARは地表などにマイクロ波を照射し、その反射波から画像を作成するレーダーです。カメラで地表などを撮影する光学衛星とは異なり、雲があっても夜間でも“いつでもどこでも"データを取得できるのが大きなメリットです。この継続性がある衛星データを基に、顧客の現場の課題を解決するソリューションの開発までを手掛けることで、競合他社と差異化する戦略です。
実は、世界初の商用SAR衛星「TerraSAR-X」をドイツが打ち上げたのは2007年のことですが、これまでは民間利用はあまり進まず、長らく偵察衛星など特殊用途に限られていました。その背景には、米国がSAR衛星の商用利用を解禁したのは2016年と最近になってからのことである上、マイクロ波アンテナの小型・軽量化が難しいという技術的なハードルがありました。