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コロナ禍におけるEC(電子商取引)需要の急伸で、物流業界の人手不足が深刻化している。こうしたなか、次世代型物流施設の実現を目指し、物流ロボットを活用したソリューションの開発や提供、コンサルティングなどを行うベンチャーが注目を集めている。元楽天物流の代表取締役を務めていた宮田啓友氏が2015年に設立したGROUNDだ。これまで人海戦術で荷物をさばいてきた倉庫を、“OS”で全体最適化するビジョンを描く。

宮田啓友(みやた・ひらとも)
宮田啓友(みやた・ひらとも)
上智大学法学部卒。1996年三和銀行(現:三菱UFJ銀行)入行。2000年デロイトトーマツコンサルティング入社。04年、アスクル入社。ロジスティクス部門長として日本国内の物流センター運営を行う。07年、楽天グループ入社。物流準備室長、物流事業長を歴任した後、10年に楽天物流を設立し、代表取締役社長に就任。12年に楽天執行役員物流事業長などを歴任。15年4月GROUND設立。(写真:加藤康)
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 今、物流の現場は深刻な人不足で、過酷な状況にあります。残業はもちろん、土日も積み残しの出荷作業をやっていたりします。

 弊社のR&Dセンター「playGROUND」(千葉県市川市)が位置するベイエリアは物流施設がひしめいていますが、人の奪い合いが激しくなっています。例えば、現場で働くパートスタッフの時給は13年には平均で900円強でしたが、21年末には1100円に上がっています。資金力がある大手の中には、時給を1300円以上に上げてスタッフを雇用している企業もあります。

 倉庫物流業界で「3PL」と呼んでいる物流受託業の営業利益率の平均値は5.5%ですが、原価の大半は人件費です。しかも、この10年で15%程度も上がりました。大手ならこれでも人を集められますが、中小の物流業者は人を集められず、社員が現場に出て夜中まで作業をしていたりします。

 我々がロボットやAI(人工知能)で物流施設を合理化・省人化すると言うと、「雇用を奪う」などと批判されることもありますが、もはやそんなことを言っていられる状況ではありません。最新のテクノロジーを駆使して合理化を進めないと、コロナ禍で逼迫しているEC需要に対応できなくなってしまいます。