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数人乗りの小型機から100人以上が乗る大型機まで、あらゆるサイズの航空機に電動化の波が押し寄せている。電動化は小型機業界に「空飛ぶクルマ」や「空のライドシェア」といった新市場をもたらす。大型機では燃費の向上に向けてハイブリッド機の開発が電動化技術の需要を高める。エレクトロニクス企業にとって新たなビジネスチャンスとなる。

 「電動航空機の市場は大きく成長する。我々は、同機の研究開発に数億ユーロ(数百億円)を投じる」。フランスAirbus(エアバス)で、電動化の研究開発を主導するGlenn Llewellyn氏(同社General Manager, Electrification CTO)は、こう意気込む。

 電動航空機はモーターやインバーター、電池といったパワーエレクトロニクス(パワエレ)技術を活用して飛ぶ航空機である。今まさに、この電動航空機をめぐる開発競争が激化している(図1)。

図1 電動航空機の提案が止まらない
図1 電動航空機の提案が止まらない
新興企業からAirbusのような大手企業まで、モーターで推進力を得る「電動航空機」の提案や研究開発が活発である。都市内や都市近郊といった近距離を移動する数人乗りの小型機は2次電池とモーターだけで飛行する「フル電動」が主流だ。大型機でも、電動推進の取り組みが盛んになっている。こちらは、従来のジェットエンジンと電動推進力を組み合わせる「ハイブリッド」型が前提である。(図・写真:「Pop.Up Next」を除き各団体)
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 大手の航空機メーカーや航空機向け部品メーカーはもちろん、これらのメーカー出身者や航空宇宙の研究機関出身者が電動機を開発する新興企業を続々と立ち上げている。米Dell(デル)や米Google(グーグル)、米Microsoft(マイクロソフト)などに在籍していたAshish Kumar氏が設立した米Zunum Aeroなど、IT(情報技術)業界という「異分野」からの参戦も出てきた。

 自動車業界からは、中国Geely Automobile(吉利汽車)やスウェーデンVolvo(ボルボ)、英Lotus(ロータス)などを傘下に収める中国Zhejiang Geely Holding Group(浙江吉利控股集団)が、陸と空の移動が可能な「空飛ぶクルマ」や電動アシスト型の垂直離発着(VTOL)機を手掛ける米国の新興企業Terrafugiaを2017年11月に買収した。

 日本では、自動車メーカーの技術者である中村翼氏が代表を務める有志組織「CARTIVATOR(カーティベーター)」が、人が乗れる電動VTOL機の開発に取り組んでいる。2017年5月には、トヨタ自動車グループを中心とする15社から4250万円の出資を受けた注1)

注1)CARTIVATORの協力企業は増加中。例えば、2018年3月に、まず日本ナショナルインスツルメンツとのスポンサー契約を発表。次にパナソニックの支援、続いてNECのスポンサー契約が決まった。なお、CARTIVATOR代表の中村翼氏のインタビューは「Challenger」を参照。

 加えて、トヨタ傘下の米Toyota AI Venturesは、Intel CapitalやJetBlue Technology Venturesといったベンチャーキャピタルと共に、米国の電動VTOL機の新興企業Joby Aviationに対して1億米ドルを出資した。

 トヨタ自動車本体も、空飛ぶクルマの研究開発を行っているもよう。同社は発表していないものの、「東富士研究所(静岡県)で空飛ぶクルマの研究を行っている」(複数の車載分野の技術者)。出願特許を調べると、空飛ぶクルマを研究していることが分かる。