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 例えば、パイロットが意識を失い、機体が地面に衝突しそうになっても、「Automatic Ground Collision Avoidance System(自動地面衝突回避システム)」によって自動で上昇し、衝突を避ける注2)。これまで一部の軍用機や民間旅客機に搭載されていたものの、「小型機としては初」(Carl氏)だという注3)。AIAA SciTech Forumの講演では、自動地面衝突回避システムを搭載した軍用機が、同システムによって衝突を回避する場面の動画を見せ、その安全性を強調した。

注2)同機能では、航空機の迎え角が高すぎると判断すると、サーボモーターが自動で操縦かんを前方に押し倒し、迎え角を小さくすることで衝突を避けるという。
注3)2019年に最初に発売する製品には、自動地面衝突回避システムの機能は搭載しないものの、発売後、ソフトウエアアップデートで対応する予定である。

 さらに仮にエンジンが故障しても、モーターだけでプロペラを回し、滑空しながら着陸できるようにした。GPS(Global Positioning System)を使い現在の位置や高度などを他の航空機や管制官に送信し続ける「ADS-B」に対応することで、安全性が一層高まるとしている。加えて、緊急時には大型パラシュートが開き、急落下を防ぐ仕組みも導入している。こうした一連の安全対策によって、「死亡率を大幅に減らせる」(Carl氏)とみる。

 ジーリーの買収によって、「大きなリソースを得た」(Carl氏)Terrafugiaは、さらに研究開発に力を入れる。例えば、サンフランシスコに研究開発拠点を、中国には製品製造の拠点を新たに設ける。

 次世代機の開発にも着手。2018年3月時点で2つのコンセプト機を公表している。

 1つは、「TF-X」である。特徴は、大きな揚力と推進力を得やすい「チルト型」の回転翼(ローター)を備えること。離陸時には、地面に対してローター部を水平(ローターの回転軸を垂直)に配置し、地面に向けて風を吹き付けて揚力を得る。浮上後、ローター部が地面に対して傾くように回転(チルト)させることで、水平方向の推進力を得て、目的地まで飛行する。

 もう1つのコンセプト機は「TF-2」である(図2)。ジーリーによる買収から100日が経過したのを機に、2018年2月に発表した。特徴は、4人乗りのカプセル型のキャビンを、飛行時と走行時で異なる機体に接続すること。飛行時はVTOL機でキャビンを抱きかかえるように接続する。地上を走行する場合は、自動車の荷台部分にキャビンを配置する。VTOL機の離発着場で、キャビンの着脱や受け渡しを自動で行うようにする考え。

図2 カプセル型キャビンを空と陸で移動
図2 カプセル型キャビンを空と陸で移動
Terrafugiaは、2017年11月の浙江吉利控股集団による買収から100日が経過したのを機に、新たなコンセプト機「TF-2」を発表した。4人乗りのカプセル型キャビンを飛行する際はVTOL機で抱きかかえるように結合する。地上を走行する場合は、自動車の荷台にキャビンを置く。VTOL機は離着陸用ローターと推進用ローターの2種類のローターを備えたモデルと、離発着時と巡航時でローターの回転面を切り替えられるチルトローターを備えたモデルがある。(写真:Terrafugia)
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 TF-2のVTOL機は離着陸用ローターと推進用ローターの2種類のローターを備えたモデルとチルトローターを備えたモデルがある。後者は巡航速度が高く、かつ飛行距離も長いものの、前者よりも運賃がやや高くなるとみている。

欧州発の空飛ぶクルマ

 Terrafugiaと並び、製品化の面で「先頭集団」にいるのが、オランダPAL-V InternationalやスロバキアAeromobilである。

 このうちPAL-Vは、2人乗りの空飛ぶクルマ「PAL-V Liberty」を2019年に製品化する(図3)。その実機を、2018年3月開催の自動車関連の展示会「ジュネーブモーターショー 2018」で披露した。

図3 ジャイロコプター型の空飛ぶクルマ
図3 ジャイロコプター型の空飛ぶクルマ
PAL-Vは、「ジャイロプレーン(ジャイロコプター)」として飛行できる空飛ぶクルマ「PAL-V Liberty」を2019年に発売する。それに先立ち、2018年3月に開催された「ジュネーブモーターショー2018」に出展した(a、b)。走行時は、飛行に必要なローターとプロペラは折り畳んだ状態にしておく(c)。飛行する際、折り畳んでいたローターとプロペラを展開する(d)。PAL-V Libertyには、「リミテッドエディション」と「スポーツエディション」の2モデル用意する。前者には、例えば各種情報を表示するアビテーションディスプレーを運転席に備える(e)。(写真:(d)はPAL-V)
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 PAL-V Libertyは、「ジャイロプレーン(ジャイロコプター)」として飛行する。ジャイロプレーンはヘリコプターのような回転翼(ローター)を備えるものの、その仕組みは異なる。

 ヘリコプターではエンジンで直接、ローターを回転させる。一方、ジャイロプレーンの場合、別途備えたプロペラをエンジンで駆動して前進し、その前進によって生じる気流をローターで受けて回転させる。ローター側にエンジンがない分、「ローター部の構造はシンプルで、メンテナンスも容易」(PAL-V 共同創立者でCEOのRobert Dingemanse氏)という利点がある注4)

注4)冗長性を確保するため、エンジンを2基備える。1基が故障しても飛行できるようにしている。2基とも動作しなくなっても、降下する際に生じる気流をローターで受けながら、「ゆっくりと着陸できるので安全」(Dingemanse氏)とアピールする。

 PAL-V Libertyの場合、本体の後方にプロペラを配置し、地上走行時に、ローターとプロペラは折り畳んだ状態にしておく。飛行する際、それらを展開する。

 PAL-V Libertyには、「リミテッドエディション」と「スポーツエディション」の2モデルを用意。価格はそれぞれ、75万ユーロと60万ユーロである。2モデルの違いは、本体色や装備品などだ。例えば、リミテッドエディションには、各種情報を表示するアビテーションディスプレーを運転席に備える。

 一方、Aeromobilは、2020年ごろに製品を発売するとみられる。製品版の最終プロトタイプ「Aeromobil 4.0 STOL」を2017年に発表し、購入予約を開始した(図4)。

図4 スロバキア発の空飛ぶクルマ
図4 スロバキア発の空飛ぶクルマ
2010年の創業以来、「空飛ぶクルマ」の研究開発を続けてきたスロバキアのAeromobilは、2020年ごろ市販予定の「空飛ぶクルマ」の最終プロトタイプ「Aeromobil 4.0 STOL」を2017年に発表した(a)。加えて、2018年3月には、垂直離着陸可能な次世代機「Aeromobil 5.0 VTOL」のコンセプトを発表した(b)。(写真:Aeromobil)
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 次世代機の開発も始めており、そのコンセプト機「Aeromobil 5.0 VTOL」を2018年3月に発表した。その名称に「VTOL」とあるように、垂直離着陸できる点を特徴にする。Aeromobil 4.0/5.0はいずれもエンジンで飛行する。Aeromobil 5.0は離陸時に、モーターによってアシストすることで垂直離陸を可能にするという。