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電動車両がけん引してきたパワーエレクトロニクス技術の進展で、にわかに現実味を帯びてきた電動航空機。だが、電動航空機の時代を迎えるには、一層の性能向上が必須である。中でも軽量化、すなわち「高密度化」がカギを握る。モーターであれば重さ当たりの出力を、電池であれば重さ当たりのエネルギー(容量)を約5倍にするのが目標になる。

 ハイブリッド車や電気自動車といった電動車両の開発競争によって、駆動用のモーターやモーターを制御するインバーターといったパワーエレクトロニクス技術は従来に比べて性能が向上した。モーターやインバーターは小型・軽量化、高出力化した結果、出力密度が高まり続けている。電力源の2次電池もエネルギー(容量)密度が向上中だ。それでも、航空機の電動化を進めるには、一層の密度向上が不可欠である。

 車載のモーターやインバーターの場合、特に重視されるのは小型化だ。すなわち、体積当たりの出力密度を高めることである。もちろん、コスト削減も強く求められる。一方、航空機では軽量化に重きを置く。「航空機分野でも部品のコスト削減は重要だが、優先されるのは軽量化である」(複数の航空機分野の技術者)。

 それでも、電動車両向けモーターやインバーターは小型化によって軽くなり、重さ当たりの出力は向上した。例えばモーターの場合、現状でおよそ1.5~2kW/kgとされる。これは、小型のプロペラ機を電動化できる水準である(図1)。ただし、座席が数席の電動垂直離着陸機(電動VTOL機)や、20席以下の「ビジネス機」では、5kW/kgが必要になる。さらに10kW/kgまで高めれば、数十席のリージョナル機や100席以上の大型旅客機の電動化が見えてくる。

図1 航空機の電動化は「高密度」がカギ
図1 航空機の電動化は「高密度」がカギ
航空機を電動化する上で重要なのが、モーターやインバーター、電池といったパワエレ技術である。航空機では軽いことが重要なので、モーターやインバーターであれば高い出力密度、電池であれば高い容量密度が求められる。航空機用モーターであれば、現状で出力密度5.2kW/kgを達成しており、20席程度のビジネス機に適用できる水準に達している。(図はJAXAの資料や取材などを基に本誌が作成)
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 電動航空機用モーターの出力密度向上で先行するのが、ドイツSiemens(シーメンス)である(図2)。同社は、出力260kWのモーター「SP260D」を試作し、小型飛行機「Extra 330LE」に搭載して飛行試験を実施した。その結果、時速337.5kmと、フル電動の航空機として最大の速度を達成した。このモーターの重さは50kgで、出力密度は5.2kW/kgと大きい。前述した、VTOL機やビジネス機に適用できる水準に達している。実際、SP260Dをベースにしたモーターを、フランスAirbus(エアバス)が研究開発中の電動VTOL機に適用するという。

図2 出力密度5kW/kgを超えるモーター
図2 出力密度5kW/kgを超えるモーター
Siemensは、電動航空機向けに、出力密度が高いモーターの研究開発に力を入れている。同社は、出力260kWのモーター「SP260D」を試作し、小型飛行機「Extra 330LE」に搭載して飛行試験を実施した。その結果、時速337.5kmを達成した。このモーターの重さは50kgで、出力密度は5.2kW/kgと大きい。2つのインバーターで駆動する。小型・軽量化のために、インバーターにはSiCパワーデバイスを適用した。(写真:(a)~(c)はSiemens)
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