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Honeywell特許と新参の特許に注目

 Honeywellの特許は重要なため詳しく解説する。その請求範囲は広く、大きく5つに分類できる(図5)。防衛関連向けに開発した成果で、特許の存在が表面化した際には他の企業は対応に追われた。

図5 Honeywell特許の請求項
図5 Honeywell特許の請求項
赤外線センサーに関するHoneywellの特許の請求項を5つに分類して示した。(図:筆者)
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 1つはVOX抵抗ボロメーター。もともとの特許は金属酸化膜に関するものだったが、後からVOXに関する項目が追加されたと言われている。第2は、2層のマイクロボロメーター構造。断熱を2層構造で行う。第3は干渉吸収構造。金属反射膜を画素の下部に置いて遠赤外光を吸収させる。これもアイデアとしては既にあったが、この構造に統合するということで、特許としては成立している。第4はパルス通電。抵抗ボロメーターは電流を多く流すことで電圧変化を大きくできる。ただし連続的に流すと抵抗ボロメーターが壊れてしまう。そこで短パルスにして通電する。イメージセンサーでパルス通電するアイデアは既にあったが、同社の特許は成立している。第5は、温調器付き真空パッケージ。温度を調整しないと画像が安定しないため、関連の特許が成立した。ただしこれらの特許はもう切れている。

 一連の特許でHoneywellと契約した相手は多数に上る注1)。現在では同社の特許は切れているため、それほど意識しなくてよい。しかし、多くの企業が参入しているため、それぞれの企業が取得した特許はチェックしなければならない。

注1)少なくとも、VOXで8社、アモルファスSiで2社である。前述の通りULISはアモルファスSiで実用化しており、Honeywellの特許は問題ないと判断していた。しかし、欧州でHoneywellの特許が成立しそうになったところで、結局は契約したようだ。仮に特許係争になった場合には、1年くらい販売できなくなって顧客に迷惑をかけると判断したからではないか。筆者は今でも特許には抵触しないと考えている。