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遠赤外線光を取り込んで撮像するカメラ(赤外線カメラ)のコストや性能を大きく左右するのがレンズだ。可視光カメラと異なり、ガラスレンズが使えない。遠赤外光の透過性に優れるゲルマニウム(Ge)をはじめとする既存材料は高価で加工も難しい。スマートフォンと組み合わせて使う小型カメラでは、シリコン(Si)や樹脂などを採用する動きが出てきた。(本誌)

 今回は、物体の発する遠赤外線を撮像するカメラ(以下、赤外線カメラ)技術について解説する。可視光のカメラとは異なるレンズと補正技術を中心に紹介していく。

Ge代替に複数の候補

 赤外線カメラの構成要素のうち可視光カメラと大きく異なるのはレンズだ。赤外線カメラには可視光用のレンズが使えない。一般的なガラス製レンズは、SiO2ガラスを主原料とする場合、近赤外向けでも十分な透過率が得られるのは2.5µmまでの波長である。遠赤外線の8µ~14µmには使えないことになる。

 遠赤外線向けレンズの材料は、可視光向けレンズ材料と全く異なる。レンズ材料は極めて重要であり、コストに占める割合も大きい。遠赤外線向けレンズ市場で大きなシェアを占めるのは、米FLIR Systems、イスラエルOphir、ベルギーUmicoreである注1)。3社合わせて70%以上を占める。

注1)FLIRは、自社の赤外線カメラ向けのみに供給し外販はしていない。