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AI技術はMIにとって第2波

 最近になってMIで新しい材料が開発され始めたのは、(3)のAI技術の発展が大きい。ディープラーニング(深層学習)が再発見されたのが2012年。実は、2011年に始まった米国のMGIなどでは、系統的な実験や計算結果を基にしたデータベースの整備に重点がおかれ、機械学習などはその次の課題という扱いだった。

 ところが、AI技術の研究や応用がさまざまな成果を上げ、囲碁AIの「Alpha Go」が人間のチャンピオンを破るなどしたことで、AI技術の人材が急増。そうした人材がMIに参加し始めた。結果、必ずしもデータベースが充実していなくても、少ないデータを基に精度の良い解析や予測ができるようになってきたのである。「海外はデータベースの構築では進んでいるが、日本はデータベースが弱い分、AI技術の導入が早く、結果として新材料開発では一歩リードしている」(ある研究者)という見方もある。

仮想実験なら結果は瞬時に判明

 MIの中でAI技術の果たす役割は(a)データのモデル化、(b)実験などの効率化や探索の効率化、(c)データの量産の支援、と大きく3つある(図4)。

図4 AIの主な役割とメリットはそれぞれ3つ
図4 AIの主な役割とメリットはそれぞれ3つ
MIに用いるAIの3つの役割(a)と、得られるメリット(b)をまとめた。
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 モデル化とは、温度や圧力、組成といった実験/計算のパラメーターの値に対して、所望の特性の値を予測する関数を構築することだ(図5)。ただし、関数といっても多くの場合、数式ではなく、いわば三角関数sinθのθの値と関数値を早見表にしたようなものになる。ひとたび予測精度が高いモデルができれば、時間やコストのかかる実験をしたり、微分方程式を解いたりしなくても、そのモデルを用いた「仮想実験」では、パラメーターの値を入力するだけで瞬時に結果を得られるようになる。

図5 データから直接モデルを構築
図5 データから直接モデルを構築
MIによる材料開発の典型的な流れ(a)と、機械学習で生成する「モデル」の意味(b)を示した。
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 ただし、現状では多くの研究開発でデータが必ずしも十分ではなく、精度の高いモデルが構築できるケースは少ない。その場合も(b)、すなわちAI技術を使って次の実験でどのパラメーターの値を調べればよいかを予測することで、最小の実験/計算回数で期待する結果を得ることができる。たとえモデルがあったとしても、それが多次元関数である場合には、所望の値を得るのにAI技術が役立つ。(c)は、データ自体を生み出す上でも、AI技術が利用できることを指す。