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グラウンドを理解する

 次に、グラウンドの本質が分かると、アンテナや雑音の理解が進む。グラウンドは、電位的に0Vになっている安定な面で、電気信号においては鏡のようにも考えることができる。ここで、分かりやすく説明しよう。

 例えば、グラウンドとなる大地の上に、図3のように地上に配置された電線を考える。地上(大地の上側)の高さ d の電線上にあるa1の電位を+5Vとする。すると、地下(大地の下側)の地面から等距離 d にあるb1の電位が-5Vでないと、その中点(c1)の地面の電圧がグラウンド電位の0Vにならない。同様に、+5Vの場所から右に少し離れた電線上のa2の電位が+3Vだったとすると、そこから地面を挟んで等距離の地下にあるb2の電位が-3Vでないと地面(c2)はグラウンド電位の0Vにならない。

図3 グラウンドは電気信号の鏡と考えられる
図3 グラウンドは電気信号の鏡と考えられる
(出所:アンプレット通信研究所)
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 地下には実際に電線は存在しない。しかし、あたかも架空の電線があるように電位が発生する。この架空の電線をイメージ(映像)の電線という。

 次に、地上の実際の電線と地下のイメージの電線に、電流はどう流れるかを考えてみる。電流は電位の高い方から低い方へ流れるので、地上の電線には+5Vから+3V(a1 → a2)へ向かって流れる。一方、地下のイメージの電線には-3Vから-5V(b2 → b1)へ向かって流れる。地上の電線では左から右へ、地下のイメージの電線では右から左へ電流が流れる。グラウンドがあると、その上にある電線がアンテナでも伝送線路でも、電線に流れる電流と逆向きの電流がグラウンド下のイメージの電線に流れる。

 このグラウンドの性質を理解すると、アンテナの設置方法の基本原則が見えてくる。自動車のボディーやプリント基板のアースパターンなど、グラウンドとなる金属の面に対して、アンテナを構成するエレメントを平行に配置してしまうと、アンテナとして動作しなくなってしまう。アンテナとして動作させる場合は、エレメントを金属面に対して垂直に立てる。

 理由は、グラウンドの性質を考えれば分かる(図4)。図の左に示すように、ダイポールアンテナのエレメントを金属面に対して垂直に立てる。エレメントの両端の電位を、金属面から遠い方を+5V、近い方を+1Vとする。すると、金属面の裏側にイメージとして現れたエレメントの電位は、金属面に近い方が-1V、遠い方が-5Vになる。現実のダイポールアンテナとイメージのダイポールアンテナのいずれも上から下へ電流が流れるので、双方が電磁波を放射するアンテナとして動作している。

図4 アンテナとグラウンドの関係
図4 アンテナとグラウンドの関係
(出所:アンプレット通信研究所)
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 これに対して、金属面と平行にエレメントを配置する(水平ダイポールアンテナ)と、実際のアンテナと架空のアンテナでは逆方向に電流が流れる。この結果、エレメントに流れる電流で発生する磁界の回転方向が、金属面の表側と裏側で逆向きになり、発生する磁界が相殺されてしまい、電磁波が放射されなくなってしまう。これでは、アンテナとしての用をなさなくなってしまう。

 金属面の性質をうまく利用し、1/2波長のダイポールアンテナを半分に切った1/4波長のエレメントを金属面の上に立てると、金属面の裏面にできたイメージの1/4波長のエレメントを伴ってダイポールアンテナとして動作させることができるはずだ。我々が準備する現実のアンテナのエレメントは、ダイポールアンテナの半分の長さで済むことになる。これが、モノポールアンテナである。

 このアンテナの上端の電位を+5Vとする。下端はグラウンドに接しているので、電位は0Vである。グラウンドの裏側を考えると、アンテナ上端からグラウンドに対して等距離の場所の電位は-5Vとなる。グラウンド上の実際の電線も、グラウンド下の架空の電線も、電圧が高い上から電圧が低い下へ向かって電流は流れる。発生する磁界の回転方向は一緒だ。従って、電磁波を放射するアンテナとして使える。

 なお、モノポールアンテナは信号源の個数も半分にできる。ダイポールアンテナはアンテナエレメントの中央で、2つの信号源で差動の高周波電圧で給電(平衡給電)しなければならないが、モノポールアンテナでは1つの給電点にのみ、1つの信号源の高周波電圧を印加(不平衡給電)すればよい。