アシストスーツでは、動力を使うアクティブタイプの製品が将来的には主流になるとみられる。しかし、現状では体験者が少ない上に価格が高く、導入に二の足を踏む企業も多い。そこで、価格が安く、動力を使わないパッシブタイプに市場の開拓役としての期待が集まっている。実際、工夫をこらした“とがった”製品が多いのが特徴だ。
1/20の価格破壊で“着るハードル”を下げる
そのプライスリーダーになりつつあるのが輸送用パレットのレンタル事業を手掛けるユーピーアールだ。まるでコルセットのようなパッシブ型アシストスーツ「サポートジャケット Bb+FIT」を開発した(図A-1)。価格は2万5000円とパッシブ型の競合製品の1/20と破格に安い。まずは使ってもらわなければ始まらないという考えだ。「現状のアシストスーツは着用して作業すること自体が高いハードル。しかも価格も高い」(ユーピーアール物流事業本部アシストスーツ事業部長の長澤仁氏)。その結果、2018年9月の発売以降半年で約1万着売れたという。
ただし、単に安いだけではない。装着時の違和感の低減にも注力したという。具体的には、姿勢の矯正に重点を置き、人間工学に基づいた“2本目の背骨”と太い腰ベルト、腰ベルトと膝下をつなぐゴムの弾性で、腰の負荷が少ない姿勢を保つようにした。「着るハードルを下げられれば、高級品(アクティブ型)の購入につながる」(長澤氏)。
介護分野を中心に4000台以上出荷
イノフィスは空気圧式人工筋肉を使ったパッシブ型アシストスーツの第5世代製品「マッスルスーツ Edge」を2018年9月に発売した(図A-2)。2019年内に第6世代製品を発売予定とする。これまでにシリーズ累計で約4000台販売した。販売台数の約6割を介護用途、約3割を製造業が占める。介護分野で導入が進んだ背景には、各自治体の「介護ロボット導入支援事業」による補助金が挙げられる。平均して毎月50~100台売れており「この1~2年で販売台数が急速に伸びた」(イノフィス代表取締役社長兼CEOの古川尚史氏)。介護施設だけではなく在宅介護に携わる利用者もターゲットだ。古川氏は「誰でも各家庭で使えるように10万円前後まで価格を抑えたい」と意気込む。
シンプルな本体設計で軽さを追求
オランダLaevo製「Laevo exoskeleton」は、重さが約2.8kgと最軽量級だ(図A-3)。腰ではなく体幹を支持する設計で、背骨にかかる負荷を分散するために胸部側のパッドと2本のフレームで体を支える。着用者の自重の位置エネルギーをガススプリングに蓄積し、体を支えるアシスト力として再利用して前傾姿勢などの負荷を軽減する。2017年の製品化以降、海外で2000台以上出荷しており、複数の大手海外自動車メーカーや大手物流企業が導入した。「3年前にはまだ市場すらなかった」(アジア販売代理店の加地 取締役営業本部長の塩谷俊之氏)。日本では2018年10月に発売し、5カ月で50台以上を出荷した。今後は「年間1000台の出荷が目標」(塩谷氏)とする。
海外製品を日本向けに改良して上腕支援
住宅部材メーカーのダイドーは、腰ではなく上腕を支援するアシストスーツ「TASK AR1.0」を開発した(図A-3(b))。
米Ekso Bionicsとライセンス契約して、同社製「Ekso Vest」を日本向けに改良した。天井板のビス止めなどの上向き作業で上腕を支える。ガススプリング方式で、上げている腕の自重を再利用する。積水ハウスが住宅施工現場に導入するなど建設会社での利用が多い。価格は1台30万円(税別)で、2019年2月の国内発売以降、約45台を販売した。