HDDの容量が2020年代後半に50TB(テラバイト)を超えそうだ。記録密度を現状の4〜5倍に高める可能性を秘める新技術の実用化が始まるためである。2020年中にも容量20Tバイトの3.5インチ型の量産に適用され、その後も年率15〜20%のペースで容量を拡大し続ける。2020年代のHDDは、容量当たりの単価を下げ続けることでSSDとすみ分ける。
2020年はHDDにとって転機の年となる。まず、主流製品である3.5インチHDD1台当たりの容量が、20Tバイトの大台に達する。次に、今後10年程度をけん引する新技術の実用化がいよいよ始まる。この新技術は2025~2026年にも50Tバイトを超える容量を達成する見込みだ(図1)。数十Tバイトもの大容量を比較的安価に提供することで、2020年代のHDDの主要な用途は大量データのアーカイブになるだろう。
20Tバイト品の実用化の口火を切ったのは米Western Digital(ウエスタンデジタル、WD)である。通常の磁気記録(CMR:Conventional Magnetic Recording)方式で18Tバイト、いわゆる瓦磁気記録(SMR:Shingled Magnetic Recording)†方式で20Tバイトの3.5インチHDDを年内にサンプル出荷すると2019年9月に発表した。量産開始は2020年前半の予定だ。
2020年には他社からも同様な製品が登場する見込みである。米Seagate Technology(シーゲートテクノロジー)は2019年11月の2020年度第1四半期決算発表の電話会見で、2020年前半に18Tバイト品を出荷すると表明。この製品はCMR方式であり、SMR方式を適用すれば20Tバイトを実現できる数字である。残る1社の東芝も、2019年11月に開いた技術戦略説明会で、2020年度に18Tバイトの3.5インチHDDを投入することを明らかにしている。