VR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)といった技術は、日常に“便利"をもたらす技術として浸透していく。業務や生活を一変させる可能性を秘め、普及するにつれて経済効果は大きくなっていく。VR/ARの普及には、便利をもたらすコンテンツが欠かせない。加速を続けるデバイスの進化が後押ししつつ、コンテンツ拡充の時代が到来する。
調査会社の英PwCは、世界でVR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)がもたらす経済効果は2020年に957億米ドルとなり、2019年の464億米ドルの約2倍に拡大すると予測する。さらに、2030年までには1.54兆米ドルに達すると予測され、2019年の33倍以上となる見込みだ(図1)。特にAR分野は、VR分野の2倍以上の経済効果を生むとする。
AR分野の経済効果が大きくなるのは、業務改善や働き方改革といったB to B用途で、リアル空間を基に情報を拡張するARやMR(Mixed Reality)の方が、与える影響が大きいからだ。例えば、米Microsoftの「HoloLens」は、MR用ヘッドマウントディスプレー(HMD)の先駆者として現場に広く導入されてきた。MR用HMDは、業務効率化や労働者に新しい働き方をもたらす役割を担う。日本マイクロソフト執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長 働き方改革推進担当役員の手島主税氏は「(HoloLensを使うことで)利便性が向上し現在の業務の形が大きく変わるだろう。2次元から3次元へと変化した3D空間での仕事で、新しい働き方を作り出したい」と話す。
一方のVR分野は、トレーニングやシミュレーション、プロトタイピングなどで企業に導入が進んでおり、今後は医療分野や教育分野などのB to B用途でもさらなる市場拡大を続ける。ただし、現在のVRの主な用途はゲームや音楽エンターテインメントなどのB to C用途にある。民生用途で大きな経済効果を生むためには、スマートフォン(スマホ)のように、まずはハードウエアデバイスが消費者に普及することが欠かせない。
B to C用途においてはARも同様にデバイスの普及が必要になる。価格や利便性などの課題を解決すると同時に、VR/ARがどれだけ業務や生活を便利にするかが周知されることで、より大きな経済効果につながる。