全4843文字
PR

半導体の微細化、いわゆるMoore(ムーア)の法則の終焉(しゅうえん)が叫ばれて久しい。もう終わった、まだ続く、という議論が繰り返されてきた。ある分野では、主にコスト面から微細化の魅力はなくなっている。別の分野では、主に性能面から微細化の恩恵を今でも受けている。実際に起こっているのは、微細化ピッチの鈍化と、微細化の恩恵を受けている分野の漸減である。

 コンピューティングの分野では、マイクロプロセッサー(MPU)の微細化は続くもののそのペースが鈍くなっている。これによってMPU一辺倒の時代が終わる。微細化のペース鈍化によって、これまでの性能向上のトレンドが維持できなくなるからだ。それを補償するために、さまざまな演算リソースに特定のワークロードを実行させる。これによって、性能向上トレンドの維持を図る。さまざまな演算リソースを組み合わせるヘテロジニアスコンピューティングが、2020年頃から本格的に発展していく(図1)。

図1 へテロジニアス・コンピューティング・システムで使われるチップの例
図1 へテロジニアス・コンピューティング・システムで使われるチップの例
左端はMPU、その右がGPU、その右がFPGA、右端は特定処理のアクセラレーターチップ。このスライドでは右端にはDNN処理ICやビジョン処理ICが並ぶ。(出所:Intelのスライド)
[画像のクリックで拡大表示]

 現在、コンピューティング分野、特にサーバー向けプロセッサーは、米Intel(インテル)のMPU「Xeon」の独壇場である。Moore(ムーア)の法則に名を残すGordon Moore氏はIntelの共同設立者の一人であり、同法則の維持は同社の社是となっている。後述するように、Intelは台湾TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co. , Ltd.)、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)と並び、現在でも微細化を追求する半導体メーカーである。ただし、それだけでは立ち行かないことはMooreの法則発祥の企業だからこそよく分かっている。Intelは、次の時代、すなわち、ヘテロジニアスコンピューティング時代への準備を進めてきた。

 例えば、Intelは2015年にFPGA(Field Programmable Gate Array)メーカーの米Altera(アルテラ)を買収し、10nmプロセスで製造する新たなFPGAファミリー「Agilex」の量産を2020年に始める予定である。2016年にはディープ・ニューラル・ネットワーク(DNN)処理ICの米Nervana Systemsを買収し、同社の技術をベースにした最新ICを2製品、すなわちDNN学習用の「NNP-T1000」とDNN推論用の「NNP-I1000」を2019年11月に発表した。同じく2016年には、ビジョンプロッセサーICなどを手掛ける米Movidiusも買収し、同社の技術をベースにした第3世代の「Movidius VPU」を2019年11月に発表した。Movidius VPUはDNN処理にも使える。さらにIntelは、2019年12月に3社目のDNN処理ICメーカー、イスラエルHabana Labsを買収した。