電子部品同士を配線し、回路を形成するプリント基板。前回までは、自動車やスマートフォンに使われる身近なプリント基板や、特殊な用途で使われる高機能なプリント基板の紹介をしてきました。今回は少し視点を変えて、プリント基板を製造していく中で核となる製造工程に焦点を当て、その奥深さや技術的な内容を紹介していきます。
プリント基板の製造工程には、薬液工程と機械加工工程があります。工程を大きく分類すると、エッチング、積層、穴あけ、銅めっき、ソルダーレジスト、シルク印刷、外形加工、検査工程となります。ICや受動部品の微細化の流れを受け、プリント基板の各製造工程の機械装置や材料において技術進化が続いています注1)。
今回は、プリント基板を製造していく中で核となる工程である、エッチング、穴あけ、銅めっき、ソルダーレジストの4工程について、紹介していきます。
【エッチング】
薬液で回路パターンを形成
エッチングとは、化学薬品の腐食作用を利用した表面処理の技法です。古くは銅板による版画印刷技法として発展してきた技術が、プリント基板のパターン形成技術に応用されています。
この工程の理解のために、プリント基板の回路パターン形成において、最も代表的なドライフィルム法について説明します。ドライフィルムとは、感光性樹脂を厚さ10µ~30µmのフィルム状に加工した材料で、これを銅箔の上に貼り付けます。このドライフィルムが保護膜となり、エッチング薬液の銅腐食から回路パターンを守ります。回路形成時には、回路パターン以外の部分の保護膜を取り除き、銅箔をむき出しにします。この状態で、エッチング薬液に浸すと、被膜されていないところが腐食され、回路パターンが形成されます(図1)。
ドライフィルムには、UV(紫外線)硬化樹脂が使われることが多く、回路パターンを描いたフィルムを貼り付けたドライフィルムの上に置き、紫外線を当てて回路部分を硬化させます。それ以外の部分は、アルカリ性薬液で溶かして取り除きます。
エッチング薬液は、塩化第二銅溶液が一般的です。化学反応により固体の銅箔を溶液中に溶解させます注2)。化学反応なので、エッチング量は、エッチング薬液の濃度と温度、時間で変化します。
基板製造では、基板専用の薬液スプレータイプのコンベア搬送装置を用います。エッチング量を調整したい場合は、エッチング薬液の濃度や温度を変えるのではなく、装置のコンベア速度を調整することで対応しています。
回路パターン幅は、髪の毛1本分の細さである100µm程度というのが一般的です。しかし、スマートフォンなど小さくて高機能な製品向けの基板の場合は、100µmの回路パターン幅では太く、基板面積に対して信号線を収めることができません。そこで、ドライフィルムやエッチング装置などを高精細用に変えることで、回路パターン幅を40µm程度にまで細線化しています。