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電子部品同士を配線し、回路を形成するプリント基板。前回までの講座では、プリント基板の種類や、構造、製造工程、基板製造の前工程である基板設計などの基礎的な内容を紹介してきました。今回は、スマートフォンの進化に伴って起こった、プリント基板技術の進化を紹介します。

 私たちが毎日使うスマートフォンは、今や生活になくてはならない製品の1つです。手のひらサイズの電子機器の中に、これ程多くの機能が詰め込まれた製品は今のところスマートフォン以外には存在しないでしょう。

 スマートフォンの限られた筐体(きょうたい)スペース内に、様々な機能を詰め込むためには、部品サイズを小さく薄くする必要がありました。搭載する部品サイズの縮小化によって回路幅が狭くなり、プリント基板自体の厚みの薄さも求められるようになりました。このような背景から、スマートフォンのマザーボードに利用される基板は、他の電子機器の基板よりも高度なエニーレイヤー基板になりました。

 このエニーレイヤー基板の特徴は、導体層の全層をレーザー加工で繋ぐ小径導通穴(レーザービア)、微細な回路形成技術によるライン&スペース(L/S)50µm/50µm以下の高密度配線の回路パターンを採用している点です(図1)。ちなみに、L/Sのラインとは回路パターン部分、スペースとは隣接する回路と回路の間隙のことです。

図1 スマートフォンとエニーレイヤー基板
図1 スマートフォンとエニーレイヤー基板
最新のスマートフォンでは、微細な部品を実装するために、レーザービアと微細な回路形成が採用されたエニーレイヤー基板が使われています。写真は韓国Samsung Electronicsの「Galaxy Note20 Ultra 5G」。(写真:本体の外観はSamsung Electronics、基板は日経クロステック)
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 スマートフォンが世に登場してから約10年。スマートフォンと共に、スマートフォンに用いられるエニーレイヤー基板も進化してきました。今回は、スマートフォンの進化に伴って起こった、プリント基板の技術開発の内容と技術進化を紹介していきます。