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3Dオーディオが身の回りで広がっている。個人ユースでは映像や音楽配信、放送サービスにおいて、施設を使ったエンターテインメントサービスでは映画館やコンサートホール、テーマパークにおいてだ。前者は簡素な機器で実現する「カジュアル3Dオーディオ」を、後者は多数のスピーカーを必要とする「リッチ3Dオーディオ」を駆使してさらに進化する。

 本格的な3Dオーディオ(リッチ3Dオーディオ)には、多数のスピーカーが必要だ。音を“体で感じる”ためには、人の周囲に音場を創り出さなくてはならないからだ。

 ところが家庭では、サラウンドに必要な5つのスピーカーを置くのも大変だ。外で音楽を楽しむには、イヤホンやヘッドホンのようなものしか手段がない。そこで、第1部でみたように簡易な機器で3Dオーディオを扱えるカジュアル3Dオーディオに機器メーカー各社が力を入れている。

 リッチとカジュアル―。この2つは、音を楽しむ場所によってその使い分けが進む(図1)。前者は映画館や劇場、テーマパークのような施設まるごとで音場を創り出し、人に非日常感を与える場所。後者は、日常において人々が生活する場所である。

図1 商業施設からプライベートスペースに拡大
図1 商業施設からプライベートスペースに拡大
現在の3Dオーディオシステムが提唱されてから10年以上が経過し、様々な用途で導入が進みつつある。当初は映画館など商業施設が中心だったが、3Dオーディオに対応したAVアンプやスマートフォン、サウンドバーといった再生環境が登場したことで、より身近な存在になってきた。映像配信サービスで3Dオーディオに対応したコンテンツ供給が増加し普及が加速していく。技術の進化によって少ないスピーカーでも再生できる「カジュアル3Dオーディオ」システムが整ってきたことで、これまでにない新しい領域へ用途が拡大し、より多くの場所で利用されるようになる。
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 以下では、カジュアル3Dオーディオとリッチ3Dオーディオの使いどころと、そこに向けた各社の動きを見ていく。