全6576文字
PR

熱設計のフロントローディングを実現するためには、実機での実験に頼りっきりになるのではなく、うまく熱解析を活用する必要があります。ところが、他の設計工程に比べ、熱設計では解析活用があまり進んでいません。ネックとなっているのは何か、そしてどのようにその課題を解決すれば良いのか、デンソーでの事例を示しながら解説します。

 “ものづくり”では実機による品質評価実験が重要なのはもちろんだが、これに頼ってばかりではコスト削減や開発期間の短縮は望めない。そこで当社ではパソコンの高速化に伴って急速に進歩する解析技術を利用した熱解析(熱流体解析)により、開発の早い段階で熱設計を検討できるようにしてきた。

 ただし、実験と熱解析の振る舞いが一致しなければ、設計の方向性やめど立て程度の検証までにとどまり、量産設計での定常業務化は実現できない。すると、熱解析を利用しても期待できるほどのコスト削減や開発期間の短縮の効果を出し切れなくなってしまう。

 自動車に搭載される制御用コンピューター(Electronic Control Unit、ECU)の製品設計では、プリント基板設計を始める前に基板内の熱設計が成立する仮説を立てることが必要である。最近では開発当初に製品の機能追加と小型化が要求されるのが常であり、結果として高密度実装が必要となる。この小型化要求に対して、回路設計者の頭の中では「今まで実装していた部品を全て搭載し、熱設計を満足しながら配線パターンを設計できるのか?」との不安が渦巻く。

 こうしたプリント基板設計の前段階で熱解析を活用すれば、放熱に関する課題を設計上流で取り除くことができる。例えば部品配置においては、隣接する部品から最大10℃程度受熱することがあるため、部品間隔を確保したり、プリント基板の表裏で電子部品が重ならないように配置したりするだけで数℃下がるということがよくある。要するにきょう体で放熱対策を考える前に、電子回路設計者がプリント基板設計時点で熱マネジメントをする必要があるのだ。これが実現できれば、後付けの熱対策で生じるプリント基板やきょう体の設計の手戻りを大幅に減らすことができる。しかも部品配置を変えるコストはゼロなのだから、むしろ最初に取り組むべきである。