人間に幸福をもたらす「ハッピーテック」が、日常生活の様々なシーンに実装される未来が近づいている。センサーやAI(人工知能)などの技術を活用し、製品やサービスを利用する人の感情に応じて「個別最適化(パーソナライズ)」する技術だ。ハッピーテックは新しい製品・サービスを生み出し、開発の在り方も変えるインパクトを持つ。
図1は、「ハッピーテック」が社会の様々な空間や場所に実装された未来の一端である。自動運転車の車室内では、乗っている人の感情を読み取って状況に適した音楽を再生したり、街中ではサイネージに表示する広告の内容を、見ている人の関心度に応じて変えたりする。
学校の教室では、授業中に生徒たちの反応をカメラなどで撮影し、表情や仕草から感情をシステムが推定。その情報から、生徒個々人に合った授業の解説や演習などを提供する。例えば、生徒が内容を理解できず「困惑している」ようなら、授業の分かりやすい解説を送ったりする。一方で簡単過ぎてモチベーションが下がっていると判断すれば、難易度がやや高い演習問題を送るといった具合だ。
製品やサービスの利用者に幸福感や満足感をもたらすハッピーテックの中核技術が「感情推定」である。カメラやセンサーで人間の表情や生体データ、行動などを捉え、そのデータを分析して喜び、怒り、悲しみ、戸惑いなどの感情を類推する。
今、様々な企業や研究機関が図1に示したような未来の実現に向け、感情推定技術の開発にまい進している。いわば「データドリブン」ならぬ、「感情ドリブン」による開発時代の到来である。