家電の未来を左右するのは、IoTやAIを活用した「IoT家電(スマート家電)」だ。既に製品の市場投入が活発化しているが、それに付随するサービスの提供は、まだ初期段階にある。本格化には、より多くのデータを蓄積することに加え、サービスの設計開発を手掛ける人材の不足など多くの課題解決が必要になる。
大変革期を迎えている生活家電の最大のトレンドが、スマート家電とも呼ばれる「IoT家電」である。主にインターネットに接続する機能を備え、レシピや設定情報など新しいデータを入手したり遠隔操作したりといったサービスに対応する製品を指す。以下では、IoT家電の特性と現状のサービス開発の動向などを見ながら、未来を見通す。
特性は機能更新と最適化
生活家電の製品としての在り方を大きく変えるIoT家電。その特性は2つある。1つは、常に内部ソフトウエアをアップデートできるため、進化し続けられることだ(図1)。
従来の生活家電は、機能やソフトが本体に組み込まれた状態で出荷されるため、購入以降は進化しない。一方のIoT家電は、ネットに接続してソフトを更新し、機能追加や使い勝手の向上などのアップデートができる。5年以上など長期間使い続けることが多い生活家電を、スマートフォン(スマホ)のように最新の状態で維持し続けられる。
この点は、ユーザーだけでなくメーカー側にもメリットがある。例えば組み込みソフトは不具合があった場合、製品を回収して直す必要があるが、IoT家電ならソフト更新だけで修正やメンテナンスが可能だ。これまでのように複数のハードを用意するのではなく、基盤となるハードに統一してソフトで差異化することで、「複数種類の製品を作り分ける生産コストも抑えやすくなる」(三菱電機 執行役員IoT・ライフソリューション新事業推進センター長の朝日宣雄氏)。
もし製品を買い替える場合、従来の生活家電では、使用時の設定や使い勝手がリセットされてしまうことが多い。IoT家電なら、ユーザーに合わせて最適化された設定などをクラウドに保存し、ネット経由で新しい製品に移すことで、まるで長年使い続けていたように、買い替えた日から快適に使える。
IoT家電のもう1つの特性は、データ分析による個別最適化である。IoT家電の多くは、多数のセンサーを搭載することで、使用時のデータや周辺環境のデータを収集できる。
このデータを基に、使用状況や傾向、好みなどをAIで分析できる。分析結果からIoT家電がユーザーに合った設定を提案したり、メーカーが新製品を開発する際の市場調査データとして活用したりできる。