家電の在り方が変わりつつある。根底にあるのは、消費者のライフスタイルの変化に伴って今の家電がその生活にフィットしなくなってきていることだ。新しいライフスタイルに合わせるために、今、デザインの重要性が改めて問われている。
今の時代は、白いシャツを毎日着たい時に必ずしも洗濯機が必要ではない。クリーニングや、新しいシャツを定期的に届けてくれるサブスク型のサービスなど、多彩な選択肢がある。消費者がモノを所有することに対する価値を見いだせなくなるなか、必要なのは目的を果たすための「快適なユーザー体験(UX)」だ。
つまり、「インサイト」と呼ばれるような消費者のニーズをより深いレイヤーでくみ取り、そのニーズを快適に・楽しく実現できるUXをどうデザインするか。そうしたイノベーションを産むためのデザインの重要性が高まっている。
「製造・流通構造の変化」も無視できない。EMSの台頭は、自社で工場を持たなくても誰もが家電を作れる時代を生み出した。そこでは従来の家電の製造・販売の方程式が通用しない。様々なメーカーの製品を取りろそえ、スペックや価格を比較できる家電量販店が中心の市場から、消費者と直接コミュニケーションを取り、彼らのニーズをくみ取りながらその生活スタイルに合ったデザインを提供する企業が支持される市場へとシフトしてきた。良品計画やバルミューダを筆頭に、国内外の企業がこうしたプレーヤーとして、これまでの家電業界の牙城を崩そうとしている。 大きな変化が起きる家電市場で、消費者のライフスタイルを生み出してきたデザイナーは今、家電の将来をどう見ているのか。著名デザイナー、そしてメーカーのデザイン部トップに話を聞いた。