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(写真:行友重治)
(写真:行友重治)
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 2015年に、家電をクラウドに接続して人工知能化することでもっと人に寄り添う存在にするための「AIoT」(AIとIoTの組み合わせ)という概念を打ち出したシャープ。日本の家電メーカーの中ではIoTへの取り組みは早かったが、事業の現状はどうなのか。そして未来をどう見通しているのか。同社で生活家電を統括する専務執行役員 スマートライフグループ長兼Smart Appliances&Solutions事業本部長の沖津雅浩氏に聞いた。

最初に家電事業の現状と今後10年を見通した展望についてお聞かせください。

 2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による巣ごもり需要で、国内向けの事業は前年比でプラスになりました。一方で、海外事業の比率は50%を超える計画でしたが、コロナの影響もあって前年比マイナスとなり、結果として国内比率が55%程度にまで高まりました。

 ただし、生活家電の普及率がまだ100%に達していないアジア地域などは既存の製品で今後もビジネスを伸ばせますが、少子高齢化で世帯数が減っていく国内市場は、今後10年を見据えると既存のBtoCでハードウエア売り切りのビジネスだけでは、成長はないと考えています。

 そこで全社的な戦略として「AIoT」を推進していきます。それによってハードを販売した後にユーザーにネット経由でサービスを提供したり、機能をアップグレードするなど製品の魅力を高められます。開発側の視点では、IoT家電で様々なデータを吸い上げ、それをビジネスに活用できます。例えば、洗濯機の使用データから、コロナ禍で昼間の時間帯に洗濯をしている人が増えていることが分っています。こうしたデータは以前なら外部の業者から購入していましたが、自ら取得できるのは大きなメリットです。

 現在はとにかくIoT家電を広めようということで、年間70万台程度を販売しているエアコン全数にWi-Fiモジュールを搭載しています。端末の数が多ければ多いほど、ビジネスチャンスも大きくなるからです。

IoTは今後、必須の機能になっていくのでしょうか。

 そうです。家電業界だけではなく、他の業種にもつながることによって、もっといろんなことができるようになります。実際、スマートホームは何年も前から注目されていますが、1社で魅力的なサービスを提供するのは難しく、他社との連携が不可欠になります。シャープが浴室設備を手掛けることはないですが、ガス会社と組んでクラウドで連携し、浴槽の給湯を家電から制御するようなことが実現するかもしれません。