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新型コロナウイルスによる累計の感染者数や死者数が世界で最も多い米国では、ソーシャルディスタンスをサポートするロボットへの注目がいやがおうにも高まった。特にサービスロボットと呼ばれる、従来の製造業向けロボット以外の分野の発展が目覚ましい。米国在住のフリーランス・ジャーナリストの瀧口範子氏に、最新事情を報告してもらう。(本誌)

 コロナ禍によって、あっという間に需要が急増したのは殺菌消毒ロボットだ。コロナ禍以前の2008年から同ロボットを開発してきた米Xenex Disinfection Servicesは、2020年初頭から問い合わせが殺到したと語る。同社のロボットはこれまで病院を中心に利用されてきたが、現在では空港やホテル、学校などで広く使われている(図1)。

図1 需要が急増している殺菌消毒ロボット
図1 需要が急増している殺菌消毒ロボット
Xenex Disinfection Servicesのロボット。キセノンランプから波長254nmの紫外線(UV-C)を発する。同社は95件の関連特許を保有。日本ではテルモが販売代理店を務める。(写真:Xenex Disinfection Services)
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 Xenexのロボットは手動で目的の場所まで移動させ、設置した後はUV-C(紫外線)光源装置部分が自動的に上下して机やベッドなどの表裏面照に射する。キセノンランプから高エネルギーの紫外線パルスを照射できるため、新型コロナの99.99%を殺菌できるとする。

 コロナ禍以前は数えるほどしかなかったが、殺菌消毒ロボットの開発を手がけている会社は、現在世界で100社以上あると言われる。その中には、既存のロボット会社が急ぎで開発に乗り出すケースも見られる。例えば、業務用掃除ロボット、倉庫用搬送ロボット、テレプレゼンスロボットを開発する会社などが、自社ロボットにUV-C光源を取り付けるなどした。これらのロボットが備える自律走行機能によって、倉庫やオフィス、店舗内であらかじめ設定した走行プログラムに沿って消毒ができる。UV-Cは直接人体に当たると危険なため、無人の大空間を自動照射して回れるのはロボットならではの利点だ。

 やはりコロナ禍で需要が高まったのは、テレプレゼンスロボットである。遠隔操作もしくは自律走行機能を持つ台車にディスプレーを付けたタイプのロボットだ。米国で最初の感染者が出た時、ワシントン州の病院が使ったのは古くから医療用のテレプレゼンスロボットを開発してきた米InTouch Healthのロボットである(図2)。医師の時間を有効利用することを目的として生まれたが、コロナ禍においては安全を確保する手段として今後も注目が続くだろう。医療以外の分野に向けた開発も活発化している。米iRobotからスピンアウトした米Ava Roboticsの製品のように自律的に目的地に向かう高価格帯のものから、遠隔操作を行い2700ドルと価格が安い米OhmniLabsのものなど、数々の製品が登場している。

図2 医療、ビジネス、家庭に広がるテレプレゼンスロボット
図2 医療、ビジネス、家庭に広がるテレプレゼンスロボット
コロナ禍によってテレプレゼンスロボットを導入する現場が広がっている。(a)は医師の時間を有効利用することを目的として生まれたInTouch Healthのロボット。(b)はiRobotからスピンアウトして誕生したAva Roboticsの製品。(c)は価格が比較的安いOhmniLabsの製品。(写真:(a)と(c)は各社、(b)は瀧口 範子)
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