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 自動運転用のセンサーは、LiDARとミリ波レーダー、そしてカメラが“3種の神器"などとも呼ばれる。他にも、GNSSレシーバーやIMUなどもほぼ必須のセンサーだが、利用目的や機能が似ており、時に競合するという点でこの3つに特に注目が集まるようだ。

IMU(Inertial Measurement Unit)=慣性計測装置。ジャイロや加速度センサーを用いて姿勢と加速度をリアルタイムで検知する装置。

センサー3つで安全性が強固に

 米TeslaのCEOであるElon Musk氏による「LiDARは要らない」という発言が話題になったが、この3種類のセンサーは互いに補完関係にあり、安全性を犠牲にせずにいずれかを省くことは非常に難しい(「『LiDARはレベル4以上の車両には必須』とMobileye」を参照)。たとえ同じカテゴリーに見える検知機能でも2つまたは3つを重ねて使うことに意味がある(図3)。「カメラの可視光とLiDARの赤外光、レーダーのミリ波といった異なるメディアを使うことで、ロバスト性(信頼性)がより高まる」(金沢大学 教授の菅沼直樹氏)といった効果があるからだ。

図3 3本束ねると最強に
図3 3本束ねると最強に
自動運転車に使うLiDAR、カメラ、ミリ波レーダーの特性を比較した。◎は優れている、〇は可、△は劣っているまたは利用不可、を示す。視野角以外は、3つのうちどれかは◎がある。視野角はLiDARはこれまで360°を見渡せることができ、非常に優れていたが、FMCWなど新技術だと、視野角が狭くなる傾向がある。(図:東芝と米Cepton Technologiesの資料を基に日経クロステックが作成)
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 ただし、今後は技術革新によって互いの機能が急速に接近する方向にあるのは確かで、車両における実装場所や使い方が大きく変わってくる可能性はある(「LiDARなどはクルマのどこに実装?」参照)。

LiDARの“中身"は総入れ替え?

 ただし、個々のセンサーの“中身"はそれぞれが果たして同じカテゴリーの製品と呼んでよいのか疑問に感じるほど、大幅かつ急速に変化している。特に変化が激しいのがLiDARだ。

 LiDARの基本的な構成は、(1)レーザー光の進む方向を走査する光ステアリング技術、(2)対象物に反射して戻ってきたレーザー光を受けて距離を測る(測距)する技術から成る(図4)。光をまったく走査しないタイプの製品もあるが、ほぼ近距離用で200m先といった遠方を見るための製品とは大きく異なる。こうした要素技術のほとんどが近い将来、総入れ替えになる可能性がある。

図4 LiDARの主な要素技術
図4 LiDARの主な要素技術
車載向け3D LiDARの主な要素技術は、大きく光照射技術と検出/測距技術、光軸設計、製造/集積技術に分かれる。多くはアラカルトのように選べるが、MEMSミラーとFMCWのように相性が悪い技術の組み合わせもある。(図:日経クロステック)
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