ミリ波レーダーも以前は極めて高価な技術だった。通信ICを76G~79GHz帯という高周波でもCMOS技術で製造できるようになったことで、劇的にコストダウンが進んだのである。
ただし、機能面では、カメラやLiDARに対してやや劣勢にある。これまでの大きな強みだった速度検知ができる点は、FMCW方式のLiDARが普及するとメリットが薄れてしまう。LiDARの価格が下がってくるのも時間の問題で、そうなるとミリ波レーダーの存在価値が一気に薄れかねない。
そうした中、ミリ波レーダーの起死回生策ともいえる動きが出てきた。大幅な高解像度化である(図21)。イメージングレーダーという呼び方さえ出てきた。
ミリ波レーダーはこれまで、水平方向こそ前の車両と隣のレーンの車両を区別できる4°前後の角度分解能を備えていたが、垂直方向にはほとんど解像度がなかった。そのまま垂直方向に視野角を広げると、信号機や交通標識を前方の障害物として検知し、クルマが走れなくなってしまう。そのため、垂直方向の視野角はむしろ狭める方向で開発されていた。
これが大きく変わりそうだ。最近になって水平、垂直の両方向で1~2°の角度分解能を備える製品が幾つか出てきたからだ。
高解像度化と同時に垂直方向の視野角も大きく広がった。車両と信号機を識別できるようになると、垂直方向の視野角を狭める必要がなくなる。結果、垂直方向の視野角はこれまでの5~6°から一気に20~30°へと大きく広がった。
ミリ波レーダーが高解像度化すれば、大きな弱点がなくなり、逆にLiDARなどに対して低コストという強みが大きなアドバンテージとなる。