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量子コンピューターの急速な発展によって、現在の通信で一般的に使われている暗号システムが一瞬で解かれてしまう危険性が顕在化してきた。国家機密など機微な情報を守る技術として世界で量子暗号通信の開発競争が激化している。規模で世界を圧倒する中国の脅威に、世界各国が対抗する構図が見えてきた。

 「中国が作り上げた量子暗号通信網は、“スプートニクショック”のような出来事だ」─。科学イノベーションに関する調査・分析を担うシンクタンクである研究開発戦略センター(CRDS)フェローの眞子隆志氏はこう力を込める。

 いわゆる「スプートニクショック」とは、ソビエト連邦(ソ連)が1957年10月、人類初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功し、宇宙やミサイル開発のリーダーと自負していた米国が自信を打ち砕かれ、軍事的脅威を受けた状況を示す。中国が作り上げた量子暗号通信網は世界各国に脅威を与えている。一体何が脅威なのか。

 「量子暗号通信でやり取りされる情報は、大規模な量子コンピューターが実現したとしても物理法則上、絶対に暗号を解読できない。そんな外から盗聴しようがないネットワークを中国は長大な規模で実現してしまった。(軍事的に対立関係にある)米国などにとって、これは安全保障上のバランスが崩れたことを意味する」とCRDSシステム・情報科学技術ユニット フェローの嶋田義皓氏は説明する。