全3266文字
PR

AIとの融合で生まれる「ハイブリッドヒューマン」は、AIの能力を自分のものとして身に付けた新人類だ。例えば、自分の未来の姿を予測し、状態の悪化などを未然に防げる。 “ケガや病気にならない人間”へと進化するのだ。背景にはセンシング技術の発展や生体情報、行動習慣など多種多様なデータを分析してリアルタイムに処理する技術の実現がある。

 AI(人工知能)と融合して進化した人間が「ハイブリッドヒューマン」である。ハイブリッドヒューマンは、AIによるデータ分析力を活用したケガの回避や病気の予防のほか、センシングによって収集される膨大なデータの選別、自らの分身となるデジタルアバター(電脳分身)を用いた新能力の獲得が可能だ(図1)。

図1 AIが人間の能力を大きく引き上げる「ハイブリッドヒューマン」
図1 AIが人間の能力を大きく引き上げる「ハイブリッドヒューマン」
人間とAIが融合することでハイブリッドヒューマンが生まれる。生体情報や体の姿勢などを分析することで、転倒リスクの予測や危険を早期発見し、ケガを回避できるようになる。データ分析では、これまで人間が気付かなかったささいな変化をAIが検知し、病気の予兆などを見つけられる。このほか、膨大な情報からAIが必要なものを選別してくれるフィルターの役割を担ったり、自らの分身を3DCGアバターとして可視化することでトレーニングなどの効率化を図ったりすることも可能となる。(図:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 ハイブリッドヒューマンが持つ能力の1つである情報フィルターは、AIが個々人にとって意味のあるデータを抽出してフィルタリングをする。ウエアラブル機器が普及し、生体情報の取得などで利用可能な情報の量が肥大化しているが、膨大なデータを見せられても利用者はどう活用すればいいか分からない。そこで必要なデータのみを伝えるエージェントのような役割を担う。

 電脳分身は、人間の「デジタルツイン」とも呼べる。AIによるデータ分析と、自らを精巧にトレースした3DCGアバターを用いて、現在そして未来の自分を可視化できるようになる。例えばトレーニングの効果をアバターでシミュレーションして内容を最適化できる。「アバターを少しアレンジして成長させた未来の姿を見たら、『こうなれるなら』とやる気が出る」(早稲田大学理工学術院教授の森島繁生氏)。自分の思考パターンも複製したデジタルツインなら、統計的に自分ならどの判断をするかという意思決定の補助も担える。一転して、自分とは全く別の姿のアバターに変身することで、新たな能力に目覚めたり、メンタルの強化などを実現したりすることも可能になる。

 ハイブリッドヒューマンの誕生で最も社会的なインパクトが大きいのは、AIによって“ケガや病気にならない人間”が生まれることだ。人間拡張技術開発の目的の1つである、健康寿命の延伸に大きく貢献する。