物事の理解・認識・判断といった認知、さらに予測や感情のコントロール。これらを司っているのが脳だ。昨今のテクノロジーの進化で、これまで可視化が難しかった脳機能を鍛える様々なアプローチが登場している。それは人類にとって新たな能力、つまり「ディープスキル」の獲得を支援し、人間を超進化へと導いていく。
どの世界にも「天才」と呼ばれる人がいる。例えば、膨大な知識を短時間に身に付けてしまう学者、他の人には見えていない少し先の未来を予測してプレーできるスポーツ選手などだ。彼らのスキルを獲得できたら……。こんな夢物語のような未来が実現するかもしれない。
今、スポーツ、音楽、さらにデザインといった様々な分野で人間の認知能力の拡張に対する注目度が高まっている。AIやVR/ARといったテクノロジーの進化によって、認知を司る脳機能を鍛える様々な新手法が開発されているのだ。それは将来、これまで多くの人間が獲得できていなかった能力を手軽に得られる時代へと導くだろう。
ここでは脳に関わる認知能力などが拡張された超進化人間のタイプを「ディープスキル」と呼ぶ(図1)。具体的には、技能を超短時間で習得できる「超速学習」、人間・物体の未来の動きを予測する「未来予知」、さらに他人の身体感覚などを共有・理解する「感覚融合」、感情を操作したり他人と共有したりする「感情自在」である。
将来的には、スマートフォンのアプリを購入する感覚で、こうしたスキルを誰もが手にできる時代が来るかもしれない。インターネットが様々な知識のやり取りのハードルを一気に下げたように、人間拡張技術を介したスキル・経験のやり取りが一般化すれば、これまでにない巨大市場が拓ける可能性がある。さらに、手触り感のある経験のやり取りを通じて、人間同士の理解もより深まっていくかもしれない。