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(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)

 電子機器向けのソフトウエア開発などを手がけるACCESSの共同創業者で、かつて一世を風靡した「iモード」誕生の立役者の1人でもある、TomyK 代表取締役&Founderの鎌田富久氏。近年は、エンジェル投資家としてスタートアップを支援しており、米Googleに買収されたロボットベンチャーSCHAFTに投資していたことでも知られる。その鎌田氏が注目している分野の1つが人間拡張技術で、関連のスタートアップにも投資している。同氏に人間拡張技術、そして人間の未来への展望を聞いた。

鎌田さんは「22世紀に向けて人類はどこへ向かうのか」と題したブログで、「テクノロジーで進化する『人間2.0』」について書かれています。人間2.0に導く人間拡張技術をどう定義されていて、どんな期待を抱いてこの分野の企業に投資されているのでしょうか。

 人間拡張技術はとても幅が広いと考えています。ハードウエア的な身体の拡張、ソフトウエア的な思考能力や意識の拡張に加えて、第3の要素として生命の拡張が未来にあります。身体的な拡張は工学的なアプローチが多いですが、生命の拡張に関してはやはり医療やバイオ、ゲノムとの融合領域になる点が面白い。この辺りの分野は、それぞれの専門の枠を越えて様々なイノベーションが起き、スタートアップが入りやすい領域になるでしょう。

投資先としては、人間拡張技術のどの分野に特に興味を持たれているのでしょうか。

 正直言って全部に興味があります。例えば、脳の仕組みにはまだ分からないことも多いですし、脳情報処理の分野では様々なブレークスルーが生まれるでしょう。今から約150年前にチャールズ・ダーウィンが「進化論」を書いたとき、遺伝情報であるゲノムについてはまだ全然分かっていなくて、人間とサルの祖先が同じはずはないと言われていました。ところが、実際はサルどころか他の動物も植物もゲノムのフォーマットが同じで、データの中身がちょっと違うだけということがごく最近になって分かってきました。だから100年後には、脳の仕組みなどがすべて解明されていて「昔は認知症とかで騒いでいたけれど、こんな単純なことが分かっていなかったのか」となっているかもしれません。

鎌田さんは、中長期的に人間の意識をデバイスに移植することを目指す大学発のベンチャー企業、MinD in a Device(マインド イン ア デバイス)にも投資されています。ビジネス化はかなり先のように思いますが、どのような基準で投資されているのでしょうか。

 やはり、インパクトの大きさです。世界を変える可能性があるテーマに切り込んでいくようなテクノロジーを開発しようとしているので、大きなイノベーションを起こしてくれそうという期待感から投資しています。

 現代では既に多くの事象が解明されていて、次に投資が向かう先は、人間自身、つまり健康や長寿になるでしょう。MinD in a Deviceは、そこにチャレンジし始めているスタートアップという事で関心を持ちました。同社の技術顧問である、東京大学大学院工学系研究科准教授の渡辺正峰氏はちょっとぶっ飛んでいて、脳に直接電極を刺すBMI(Brain Machine Interface)デバイスの開発で話題の米Neuralinkも経営するイーロン・マスク氏と同じような事を言っています。おそらくMinD in a Deviceの技術は最初は医療分野で使われるでしょうが、将来、我々の意識がコンピューターにアップロードされ、デバイスによって支えられるようなことが実現すれば面白いと思います。

 ただ、現時点では記憶の仕組みも完全には解明されていませんし、そもそも大きなテーマとして、意識はどうやって生まれ、どういう仕組みなのかという未解明の問題もあります。つまり、構想の実現には大きなステップアップが必要です。渡辺先生は、意識の情報をビジネス化するには20年はかかると言っています。

今でもスマートフォン(スマホ)などを介して記憶はコンピューターで代替ができているように思いますが…。

 確かに昔は電話番号を覚える必要がありましたが、今はスマホがあるのでその必要はありません。ただ、現在はその記憶を画面を通して補助してもらう格好ですが、将来、脳が直接外部のコンピューターとつながったら画面でチェックすることなくすぐに思い出せるようになるかもしれません。