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 三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)は、日本総研と共同で各種のイジングマシン、またはイジングモデルを利用したさまざまな取り組みを進めている。その1つが、経済危機時の世界経済の成長率の予測モデル「ストレステスト」の作成である。これまでは専門家が作成した1年分のモデルを、他の経済指標に合うよう補正する作業に1時間半ほどの時間がかかっていた。

 今回は、SMFGが独自に開発したシミュレーテッドアニーリング(SA)のソルバーを汎用のコンピューター上で動作させて、この補正作業の大幅時短を試みた(図1)。目的関数は、モデルと経済指標とのズレ。決定変数はモデルの補正値(8ビット)である。結果、求解時間は数分から15分で、従来の1/6以下になった。精度も目標としていた±0.05%以内を達成できた。

(a)専門家によるモデルを補正する値を求める
(a)専門家によるモデルを補正する値を求める
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(b)定式化(2次の整数計画法の拡張)
(b)定式化(2次の整数計画法の拡張)
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図1 世界の経済モデルを構成
三井住友フィナンシャルグループと日本総研が、 独自開発したSAなどで構築した「ストレスモデル」の概要。リーマンショックやコロナ禍といった経済危機に対する世界経済の予測モデルであるストレスモデルの構築は、これまでは専門家が構築したモデルを補正する作業に時間がかかっていた。その補正をSAなどで実行するようにした(a)。コスト関数には、各国の経済成長率に大きな差が出ないようにするという条件も加えた(b)。求解時間はSAが数分~15分で従来の約1/6と、実用的な時間で補正ができるようになったとする。さらにD-WaveのQAマシンで解かせたところ、数秒で結果が得られることも分かったとする。(出所:(a)は日経クロステック、(b)は三井住友フィナンシャルグループ)

 同じ問題をカナダD-Wave Systemsの量子アニーリング(QA)マシンでも解いてみると、数秒とより短時間で求解した。ただ、「SAでも十分実用的」(SMFG)とし、この件でD-Waveに頼る必要はないという評価だ。