全2043文字
PR

6Gに向けて世界で続々と推進団体が設立されるなど、国際競争が激しくなっている。「Beyond 5G推進コンソーシアム」の国際委員会委員長として、6Gの国際連携をリードする東京大学大学院工学系研究科教授の中尾 彰宏氏に、6Gに向けて日本が進むべき道を聞いた。

中尾 彰宏氏
中尾 彰宏氏
東京大学大学院工学系研究科教授(撮影:新関雅士)
[画像のクリックで拡大表示]

世界で続々と6Gに向けたプロジェクトや組織が立ち上がっています。

 海外のキーパーソンとよく話をしていますが、まだ世界的に混沌としている状況です。どこかが決定的に進んでいる印象はありません。

 ただし勢いは「6G Flagship」プロジェクトを進めているフィンランドにあります。同プロジェクトのディレクターは10年前からの知り合いですが、彼はまずテストベッドをつくることが重要と話しています。

 テラヘルツ波のような新しい電波の使い方は、テストベッドをつくりながら探る道があります。テラヘルツ波は、建物やビルなどに遮られやすくエリア構築が困難です。一方で電波が飛びにくいので干渉調整をしやすく、使いたい人が使いたいように自分たちでエリアをつくる自由度も考えられます。そうなると基地局の在り方が根本的に変わる可能性があります。

ローカル5Gのように、幅広い利用者に電波を開放する道もありそうです。

 テストベッドで実験したい幅広い利用者に使わせて、使い方を探るほうが、限られた人たちでサービスを考えるよりもイノベーションを起こしやすいでしょう。

 私は講演で、よく帽子を例に出します。帽子をつくる人が通信の提供側で、かぶる人が利用側です。これまでは通信事業者がSやM、Lサイズの帽子を用意してきました。しかし、かぶる側の利用者は、本当は自分の頭の形にあった帽子を求めています。

 通信も同じです。自分の用途にあった通信をカスタムできる、柔軟性のある環境を用意することが重要です。こうした環境から革新が生まれる可能性があります。