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これまで“1品もの”が当たり前だった人工衛星の開発に、量産化の波が押し寄せている。日本では、今後急増することが予想されるコンステレーション(多数の衛星を協調動作させる運用方式、またはそれを構成する衛星群)に向けて衛星バスを汎用化したり、基幹部品を新規開発して製造の競争力を確保する動きが活発化している。

 「宇宙の工業化が始まった」。SAR(合成開口レーダー)衛星の開発を手掛ける、Synspective 衛星システム開発部ゼネラルマネージャーの小畑俊裕氏は、昨今の衛星開発のトレンドをこう表現する。

 これまでの衛星開発は1品ずつ長い時間をかけるのが常識だった。政府系のトン(t)クラスの大型衛星になれば開発期間は約5~10年、コストは数百億円以上が当たり前だった。しかし、重さが数百kg以下の小型衛星、そしてコンステレーション(以下、コンステ)という“大波”が、過去の常識を変えようとしている。Synspectiveでは衛星開発を担当するエンジニアの半数は自動車や家電メーカーなどの出身だ。小畑氏によると、彼らからは「宇宙品質はダメだ」との声がよく聞かれるという。「1基のみを造るのと10基造るのとでは品質に対する考え方が変わる。後者では属人的な知識や経験ではなく、プロセスや試行錯誤で品質を安定させていく必要がある」(同氏)。

 2021年3月に小型の観測衛星「GRUS」4基を打ち上げ、6月からは合計5基のコンステでサービスを開始したアクセルスペースCEOの中村友哉氏は、こう言う(同氏のインタビューを参照)。「今回、自社のデータ提供サービス向けに4基を同時に造った。これは日本初の量産衛星だが、従来の“1品もの"と造り方に対する考えがまったく違うことに気づいた。もっと効率化できる仕組みをゼロベースで検討するつもりだ」(図1)。

図1 衛星量産化の時代が到来
図1 衛星量産化の時代が到来
写真は21年3月に4基を打ち上げたアクセルスペースの光学観測衛星「GRUS」。100kg級の小型衛星で2.5mの地上分解能を実現した。(写真:アクセルスペース)
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