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小型人工衛星の打ち上げ数が増加し、今後、有人宇宙飛行や月探査なども活発化するとみられるなか、宇宙へ物や人を輸送する需要は確実に拡大する。米国では米SpaceXなどのベンチャー企業が宇宙輸送というインフラ掌握を狙い、輸送の高頻度・低価格化にまい進している。一方、日本はどうか。ホンダが参入を表明するなど、ここにきて民間の動きが活発化してきた。

 宇宙ビジネスが産業として発展を遂げるための重要な要素の1つが、輸送システムの拡充である。人工衛星を用いた通信サービスやコンステレーション、軌道上サービス、月や火星などへの宇宙探査に至るまで、まずは地上から宇宙へ物や人を運ばなければ何も始まらない。

 輸送をいかに安く、高頻度にできるか。宇宙という場に経済圏を創るためにも民間のロケット会社への期待は大きい。既に米国では、米SpaceXや米Blue Originなど宇宙ベンチャーが大型ロケットを高頻度に打ち上げ、民間企業による競争が起きている。例えばSpaceXは「Falcon 9」を、2020年に年間25回打ち上げた。これはスペースシャトルの引退後に一時的に国際宇宙ステーション(ISS)への物資や宇宙飛行士の輸送手段を失った米国が、宇宙輸送を米国の民間企業に委託すべく多額の開発資金を含めて支援してきた成果の一端である。

 一方、日本の宇宙輸送は米国と比べてかなり遅れている。打ち上げが年に数回と少ない国産の「H-ⅡA」ロケットが主力という状況だ。だから、国内の衛星ベンチャー企業の多くは海外のロケット会社に打ち上げを依頼するしかない。ベンチャー企業が考えるビジネスのスピード感やコストに、国のロケットがマッチしないからだ。

 しかし、国内でも20年代前半には民間のロケット会社による衛星の打ち上げが始まりそうだ(図1)。21年9月末には、ホンダも小型衛星を軌道投入する小型ロケット事業に参入することを表明した。サービス開始は30年以降になる見通しだが、数多くの衛星が日本から打ち上げられる未来が現実になるかもしれない。

図1 ロケット開発に取り組む日本企業の例
図1 ロケット開発に取り組む日本企業の例
ロケットの1段目などを再使用するか使い捨てるかで、主な方向性が分かれている。(図は日経クロステック、写真は各社)
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