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再生可能エネルギーの導入が進んだことで、海外では電力系統の需給バランスからはみ出した余剰電力も無視できない量になってきた。その課題を解決するため、蓄エネルギーシステムの大量導入が始まった。市場規模は少なくとも数十兆円。それに向けて、さまざまなタイプの蓄エネルギー技術が次々に提案され、主導権を握るべく走り出した。

 風力発電、そして太陽光発電が急速に市場拡大を続けてきた世界で、第3のシステムがそれに続こうとしている。蓄エネルギーシステム(Energy Storage System:ESS)だ。ただし、当初は比較的緩やかに立ち上がったこれら2つの再生可能エネルギーと違って、ESS市場はロケットスタートに近い。実際、海外ではGWh級のLiイオン2次電池(LIB)の大規模システムを導入するニュースが毎日のように報じられるようになってきた(図1)。

図1 2020年以降、大規模蓄電システムが爆発的に増加
図1 2020年以降、大規模蓄電システムが爆発的に増加
米Vistraが米西海岸のMorro Bayに導入するLiイオン2次電池ベースのエネルギー貯蔵システム(ESS)のイメージ(a)。出力は600MW、容量は2.4GWhで、2024年末に稼働する予定。同社は伝統的な発電事業者で、図の奥にある煙突付き建物も同社の火力発電所だが、2028年までの廃止と解体を迫られている。(b)は調査会社の米Wood Mackenzie Power & Renewablesが2021年9月に発表した米国のESS市場規模の実績と今後の予測。2020年は前年の2.4倍になり、2021年も同3.3倍と大幅に伸びる見通し。導入容量をシステム単価の推測値から逆算すると、2021年で15G~20GWhだとみられる。BloombergNEFの2021年1月の予測を数倍上回る数字である。案件ベースでは2020年に計200GW超(容量は日経クロステックの推測で800GWh)と猛烈に増えている。世界全体で同様な傾向だという。(図:各社)
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 調査会社の英Wood Mackenzie Power & Renewablesは、2021年の米国でのESSの導入量を、前年の約3倍と見積もる(図1(b))。しかも米国外でも同じ傾向だという。「2021年の世界全体でのESSの導入量は28GWhで、2030年には累計で1TWhに近付く」(同社)。

 調査会社の米BloombergNEFが3年前の2018年11月に「2040年にはESS市場への投資規模が6200億米ドル(約71兆円)になる」と発表したが、その際、ESSの累計導入量が1TWhに近付くのは2040年という予測だった。今回はそれを10年前倒す格好だ。