再生可能エネルギーの導入が進んだことで、海外では電力系統の需給バランスからはみ出した余剰電力も無視できない量になってきた。その課題を解決するため、蓄エネルギーシステムの大量導入が始まった。市場規模は少なくとも数十兆円。それに向けて、さまざまなタイプの蓄エネルギー技術が次々に提案され、主導権を握るべく走り出した。
風力発電、そして太陽光発電が急速に市場拡大を続けてきた世界で、第3のシステムがそれに続こうとしている。蓄エネルギーシステム(Energy Storage System:ESS)だ。ただし、当初は比較的緩やかに立ち上がったこれら2つの再生可能エネルギーと違って、ESS市場はロケットスタートに近い。実際、海外ではGWh級のLiイオン2次電池(LIB)の大規模システムを導入するニュースが毎日のように報じられるようになってきた(図1)。
調査会社の英Wood Mackenzie Power & Renewablesは、2021年の米国でのESSの導入量を、前年の約3倍と見積もる(図1(b))。しかも米国外でも同じ傾向だという。「2021年の世界全体でのESSの導入量は28GWhで、2030年には累計で1TWhに近付く」(同社)。
調査会社の米BloombergNEFが3年前の2018年11月に「2040年にはESS市場への投資規模が6200億米ドル(約71兆円)になる」と発表したが、その際、ESSの累計導入量が1TWhに近付くのは2040年という予測だった。今回はそれを10年前倒す格好だ。