補助金ありきではない、「持続的」なスマートシティー実現を模索する動きが活発化している。その中で重要な要素を担うのが「市民データ」だ。市民の日常生活から発生するデータを指し、スマートシティーが受け皿になる可能性が高い。街の日常を支え、市民と企業が共存共栄できるスマートシティーの在り方を探る。
国内外でスマートシティーの取り組みが再び注目を集めている。その1つの要因が、トヨタ自動車が開発するスマートシティー「ウーブン・シティ(静岡県裾野市)」だ(図1)。
2021年2月23日に地鎮祭を終え、現在は住宅・商業施設の建設などのために土地を整備する造成工事を実施中。工事現場から建設機械が低い音を響かせ、複数台のトラックが道路を忙しなく行き交っている。今後22年に建築工事が始まり、24~25年まで工事を続けた後に「Phase1」と呼ばれるエリアを開業する計画だ1)。20年1月開催の「CES 2020」での同プロジェクト発表から着実に新たな街が形成されつつある。
冒頭で「再び」という言葉を用いたように、スマートシティーは特段新しい概念ではない。しかし、その取り組み内容は年月とともに大きく変化を遂げてきた。10年ごろは、主に増大する消費エネルギーの問題意識から再生可能エネルギーの導入、エネルギーマネジメント技術の適用などに焦点が当たっていた。そのエネルギー消費を中心とした取り組みの後、エネルギーのみならず街全体の課題を解決していく方向へと技術開発が進められている。
そのため、今、スマートシティーといえば、さまざまな技術を駆使し、都市が抱える課題を解決したり、埋もれていたデータから新たな価値を生み出したりする取り組みとなっている注1)。