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車載用リチウム(Li)イオン2次電池(LIB)が当初の役割を終えた“退役LIB”のリサイクル技術が急速に変わってきた。工程やコスト、二酸化炭素(CO2)の排出量を圧縮すると同時に、より付加価値のある材料を合成する。再生した正極材料が新品より正極としての性能が高いという報告も出てきた。経済性がなかったLiの回収にもさまざまな企業や研究機関が取り組んでいる。

 これまでは収益性の確保が難しかったリチウム(Li)イオン2次電池(LIB)のリサイクル技術が急速に進化し、本格的な事業化が可能になりつつある。それを実現する技術の方向性は大きく3つ(図1)。(1)できるだけ低コストかつ低温で処理し二酸化炭素(CO2)排出量を減らす、(2)できるだけ構造を壊さずに分解して元の部材を生かす、(3)これまでのニッケル(Ni)やコバルト(Co)だけの回収から、Liを含むほとんどの金属、そして黒鉛や樹脂類なども回収する、という方向である。具体的な手法としては、LIBを破砕して得られる正負極材料が混合した塊や粉(ブラックマス)から各種元素を取り出す方法として従来一般的だった「乾式製錬」から「湿式製錬」、さらにはその先の「ダイレクトリサイクル」へと大きく変わりつつある(図2)。

図1 より低コスト、低CO<sub>2</sub>、多元素の回収、再生を実現へ
図1 より低コスト、低CO2、多元素の回収、再生を実現へ
LIBリサイクル工程における典型的生成物(a)と今後の技術のトレンド(b)。従来の工程そのままでは経済性が成り立たず、CO2排出量も大きくは減らず、回収できるのはNiやCoだけだった。今後は、リサイクル技術が大幅に見直され、できるだけ低温プロセスかつ電池や材料をできるだけ壊さないプロセスで、低コスト、低CO2を目指す。さらに、CuやAl、Li、黒鉛、Mn、さらにはバインダーに使われている樹脂の回収も進める。(写真:スウェーデンNorthvolt、図:日経クロステック)
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図2 製錬は乾式から湿式、そしてダイレクトへ
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図2 製錬は乾式から湿式、そしてダイレクトへ
これまでLIBリサイクルの主流だった乾式製錬の概要(a)と、製錬工程によるCO2排出量の違い(b)。ブラックマスを高温で溶解する乾式製錬では元素のイオン化傾向(酸化されやすさ)の違いを利用して、酸化されにくい元素から順番に分離していく。Liはもっとも酸化されやすく、結果として一番最後になり、コストもかかる。今後主流になりそうな低温かつ化学的処理の湿式製錬は、工夫なしではCO2排出量はむしろ乾式製錬より多いが、さまざまな工夫によって低コストかつCO2排出量の大幅低減も見込める。さらに次世代の製錬、精製法として、硫酸などの劇物をほとんど使わず、物理的な分離中心の「ダイレクトリサイクル」の研究も進んでいる。(図:(a)は日経クロステック、(b)は豪Neometalsの資料に日経クロステックが加筆して作成)