スウェーデンのEricssonや中国の華為技術といった大手通信機器ベンダーの独壇場である4Gや5Gなどの通信機器分野に、ソフトウエア化とオープンソースの波が訪れている。ITの世界から遅れて通信機器市場に訪れたソフトウエア化とオープンソースの波は、通信インフラ市場を飲み込み、通信機器ベンダーの聖域を崩して価格破壊をもたらす可能性を持つ。
わずか数万円で5G(第5世代移動通信システム)ネットワークを構築可能に─。
スウェーデンのEricssonや中国の華為技術(Huawei Technologies)といった大手通信機器ベンダーが支配する4G(第4世代移動通信システム)や5Gなどの通信機器分野に、ソフトウエア化とオープンソースの波が訪れている。ITの世界に訪れたソフトウエア化とオープンソースの波は、Linuxに代表されるように、誰もが低価格で大規模コンピューティングシステムを利用できるというコモディティー化につながった。
ITの世界に遅れて通信機器市場に訪れたこの波は、通信インフラ市場を飲み込み、通信機器ベンダーの聖域を崩して価格破壊をもたらすのか。
4G、5GのOSS計画が続々
数万円程度で売られている汎用のソフトウエア無線機を、USB 3.0経由でパソコンやサーバーに接続する(図1)。パソコンやサーバー上で、オープンソースとして公開されている4Gや5Gの基地局(eNB†、gNB†)ソフトウエアを実行。さらにもう1台、コアネットワークの役割を果たすパソコンやサーバーを用意し、こちらもオープンソースとして公開されているEPC(Evolved Packet Core)†や5G Core(5GC)†のソフトウエアを実行する。これだけで、誰もが4Gや5Gの一通りのネットワーク構成を試せる時代が訪れている。ここに来て、4Gや5Gの基地局やコアネットワークの機能をオープンソースソフトウエア(OSS)として開発するプロジェクトが、世界で続々と登場しているからだ(表1)。
無線アクセスネットワーク(Radio Access Network:RAN)の分野では、例えばフランスの学術機関「EURECOM」が主導する「OpenAirInterface(OAI)」というプロジェクトがある。OAIでは既に4Gと5Gの基地局機能を実現するOSSを公開済みだ。
ソフトウエアとの親和性が高いコアネットワークの分野では、さらに数多くのプロジェクトが活動している。台湾の国立交通大学(National Chiao Tung University)が中心となった「free5GC」は、 3GPP Release 15に対応した5GCのOSSを既に公開している。米Meta Platforms(旧Facebook)が協力して安価な5GC実現を目指す「Magma」といったプロジェクトも活発な活動を続けている。