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若林秀樹氏
若林秀樹氏
東京理科大学大学院(写真:若林氏提供)

「これが最後で最大のチャンスだ。絶対に逃すな!」。こう檄を飛ばすのは、元トップアナリストで、経済産業省の「半導体・デジタル産業戦略検討会議」有識者メンバーでもある東京理科大学大学院 教授の若林秀樹氏だ注1)。半導体サプライチェーンが複雑化する一方、日本には先端ロジックの開発拠点がない状況が続く。日本政府の積極的な半導体戦略を好機と捉え、先端ロジック確保の流れを作り出せるか。若林教授に聞いた。(聞き手=中道 理、内田 泰、久保田龍之介)

注1)若林氏は日本経済新聞社が主催する人気アナリストランキングの産業用電子機器分野などで、これまで1位を5度獲得した経験を持つ。

半導体不足やウクライナ侵攻など、半導体サプライチェーンを取り巻く状況をどうみていますか。

 半導体サプライチェーンは工場火災や地震、新型コロナウイルスの影響、そしてウクライナ侵攻などを受けて、年々複雑化しています。

 半導体の在庫状況については、洋上のコンテナ船や倉庫、通関といった物流にも注意を向けなければいけません。モノによっては、今後一気に在庫が放出されることで、むしろ余ってしまう可能性があるからです。現状、機械統計では在庫量と生産量の比を表すグラフである「在庫生産曲線」が危険な45度線を超え、EMS(電子機器の受託製造サービス)の在庫も過去最高の水準にあります。米中貿易摩擦や新型コロナウイルス禍への対応で、中国Huawei Technologies(華為技術)などは2年程前から在庫を増やし、国内外の自動車メーカーでも、半導体の在庫を増やしています。中国の商社には投機的な在庫増の動きもあります。ウエハーのような本当に不足しているものと、実は余っているものを見極める必要があるのです。

 例えば直近では、コンテナ船不足や通関の日数がかかるという問題があります。後工程では、パッケージ材料不足や新型コロナによる工場休止もあります。今後ウクライナ侵攻の影響で、ロシア上空を飛べない飛行機が遠回りをして運送することで時間がかかる可能性が出てきます。