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台湾TSMC(台湾積体電路製造)の独走が止まらない。ファウンドリー業界でのシェアは世界の約半分にもなる。TSMCはどのように工場の設立計画を進め、日々うつろう地政学的リスクに対応しているのか。台湾に拠点を置くアナリスト集団Isaiah ResearchのVice PresidentであるLucy Chen氏に語ってもらった。(本誌)

 台湾TSMC(台湾積体電路製造)は、半導体産業では唯一無二の存在になりつつあります。ファウンドリー業界でのシェアは世界の約半分を占め、最先端の3nmプロセスから成熟した200mm(8インチ)ウエハーまで幅広く対応できるからです。それだけに、台湾において地政学的リスクが顕在化した場合、世界の半導体サプライチェーンが寸断される可能性があります。

 台湾には主要なファウンドリーとしてTSMC以外に、UMC(聯華電子)、Powerchip Semiconductor(力晶半導体)、Vanguard International Semiconductor(VIS)があります。ファウンドリー世界市場での台湾企業のシェアは約6割(2021年時点)に当たることから、TSMCの存在感がいかに圧倒的なのかが分かります(図1)。

図1 2022年時点のファウンドリー供給能力上位5社
図1 2022年時点のファウンドリー供給能力上位5社
(出所:Isaiah Researchの資料を基に日経クロステックが作図)
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 TSMCは1987年、半導体製造のみに特化するという優れた戦略を軸にスタートしました。同社の設立をきっかけに製造工程を外注する半導体設計会社も多く生まれました。いわゆるファブレス企業です。半導体の製造には莫大な設備投資と労働力が必要なため、自社で工場を保有するのは経営上の大きなリスクとなります。TSMCはこうした顧客のニーズを、卓越した製造技術で満たし続けてきました。

 TSMCは台湾経済においても大きな存在です。台湾のGDP(国内総生産)の7.35%(21年時点)を占めるだけでなく、先端技術分野の人材や労働力に対しての強い需要を生んでいます。台湾の先端技術産業以外の分野で発展を遅らせるというリスクもありますが、大きな雇用を生む効果をもたらしています。

 同社は台湾に完成された半導体産業クラスターを築き上げています。半導体の原材料・設備・部品・システムベンダーといった現地の供給元を援助したり、人材を育成したりして積極的に発展につなげているのです。